ふちなしのかがみ/辻村 深月
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【冬也に一目惚れした加奈子は、恋の行方を知りたくて禁断の占いに手を出してしまう。
鏡の前に蝋燭を並べ、向こうを見やると……。
子どもの頃、誰もが覗き込んだ異界への扉を、青春ミステリの旗手が鮮やかに描きだす!】


踊り場の花子
ホラーとしてはこれが好き!
トイレの花子さん、ではなく、踊り場の花子さん。階段と階段の境目。
「7つ」もよかったけどねえ、最後の一行がいい。ゾッとした。
先生と生徒と教育実習生。

ブランコをこぐ足
「事件」を、ひとりの「生徒」を周りにいたそれぞれの視点で語るお話。
ハイジのうた(とブランコのシーンに)そんな噂があったことすら知らなかった。
クラスの階級に近い。人気のある子と人気のない子。
コックリさんとそういう雰囲気のある女の子。

おとうさん、したいがあるよ
普通に可笑しいのが好き。
認知症で足腰の悪いおばあちゃんのため掃除に来た一家。
出てきた複数の死体。飼い犬、ペロの犬小屋の中から。押入れの間から。行方不明とされる人達の。
それをさっくり焼きに行っちゃうのもいいけど、そのために前付き合っていた恋人を呼ぶときのお母さんの「私、あの子好き」(P143)が好き(笑) 母!! と思った。
エンドレスっぽいなあと思ったら 父親が死体のことを覚えていなくてネズミのことと勘違いしたり。

ふちなしのかがみ
「鏡」ネタはよくあるかな、と思ったんだけど、まさかそう来るとは。
ホラーを使ったひっかけっぽかったなあ、思わず戻っちゃった。
そうすると若い女の子達の台詞が一転するわけだ、ふぅん……。
ちなみにわたしは彼女さん見たい! と一も二もなく思ったわけですがあんまり出てこなかった。(当たり前)
名前。

八月の転変地異
空想の友達。
サッカーが出来てカッコよくてチョコをたくさんもらって、という自分だけにしか存在しない友達。
喘息もちのキョウスケと一緒にいたら自分も友達のいないグループに入っていた。
せみの抜け殻と燃えた家。


ふちなし~と八月~はよくあるお話かな、と思うけど、前者はひっくり返されたから楽しかった。八月は最後まで先が読めるお話でしたが、たったひとつの話をするために長い時間を置く、というのは嫌いじゃない。
ブランコ~のような多視点での書き方は好き。それぞれ見え方が違うから。
おとうさん~は結局何事もなかったようなのが……(笑)
全体的に、詰まらないわけではないし、花子さんとか怖くてよかったんだけど、さらさら読めちゃったかなあ。おお!!(あー好きだなー) と思う所が少なかった。

(追記)
あとがきがいいよー素敵だよー。
これを読んでくださっているあなたが、できれば今、後ろめたい気持ちでありますように。(P277)


カバーイラストは山城えりかさん
カバーデザインは高柳雅人さん


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