僕と『彼女』の首なし死体/白石 かおる
¥1,575Amazon.co.jp

【冬の朝、渋谷ハチ公前。僕は生首を置きにゆく。『彼女』の願いを叶えるために。
おそるべき横溝チルドレンの登場!
第29回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作。
北村薫氏の強力プッシュにより優秀賞を受賞した本作は主人公のキャラクターそのものがまさに「ミステリ」。】

酪農家出身強いな!

■ 感想とか色々~

最初はよかった……よ。
ただちょこちょこ都合がよかったかも。
老刑事の知り合いが大叔父とか、倉庫を譲ってくれた同じ大学出身の先輩とか。
文自体は簡単だったしそこまでひねくれてもいないのでスラスラ読めたけど、うーん……。
地震……ねえ。来ないとは言わないが聊か急すぎたかも。
いや地震に直前以外での伏線あることなんてないんだけど。
群集は惑ってるのに主要三人(いつきさんと僕と野田)は至って冷めた目線で見ていたのには何者だ、と。
作者の名前=主人公の名前、はあんまり気にしない。
前例があるからかもしれないし、その前例が幸せなものだったからかもしれないけど、どちらにしたって“名前”だし、物語と現実は違うから。

それより気になったのはいつきさんのムリヤリさ加減。
よくもまあ“偶々”出会う厄介な女性ですこと。面倒くさいなあ。
一々一々つっかかってくんじゃねえよ と何度思ったことか。
そう、「女性だからこそ」そういう風に解釈するのかもしれないけど、残念すぎるねえ。
愛とか恋とか、そういう言葉に付随する関係で面白いものは多いけど、詰まらないものも多いよ。
愛してなくても守りたいものはあるよ、好きでなくとも大切にしているものはあるよ。
いつきさん視点での白石かおるだったらまた印象が違ったのかもしれないけど、ずっと白石さん視点だったから、この人自分自身に対しては嘘をつきそうにないよな、と。嘘、と認識することも少なそう。

白石さんを奇妙な人だなあと思ったのは電話での応対が冷静すぎたこと。
地震のときもそうだけどねえ。まあそれも最初から犯人探しを期待していたのであれば頷けないこともない。
野田のことを親友と表するのは……「親友」という言葉を使うのは1回でいい、悪友とか腐れ縁とかの方が好き。
仕事上での咄嗟の機転はまあ面白かったし、それが後になって利用されるからいいんだけど、ちょっと地頭力な感じもしたり。

この作品の選評部分もちらほら読みましたが(選評/解説はその良し悪しに関わらず存在自体が苦手ですが) うーん……主人公自体にミステリを感じなかったからなんとも。
『彼女』と犯人とのつながりには落胆。表紙とタイトルで読みました。(すいません買ってないです借りました)

装画は夢花李さん!
あえて夢花名義なのはなんでなんだろう。好きー。