モンティニーの狼男爵 (光文社文庫)/佐藤 亜紀
¥500Amazon.co.jp

【ラウール・ド・モンティニー男爵は、狼狩りの達人でした。
その男爵が、ひょんなことから奥方を迎えることになりました。
尼僧院で育った優しい娘。そして、その娘に会ったとき、男爵は彼女を自分の魂のように愛しはじめたのです。
世にも珍しい、もっとも地味なカップルを扱った、フランスを舞台にした、正しく洗練された恋愛小説。 】

面白かったー!!

■ 感想とか色々~

あらすじまんま。そのまんま。
地味。地味。すっごーーーーく地味。
人が死ぬわけでもないし領地の問題が起きたり跡継ぎ争いが起きたり国王の隠し子だったりするわけでもなく、ハーレクインのように おいおいあんたら と思うこともなければ(ハーレクインは嫌いでもなければ好きでもありませんが時々漫画を読みます)若い人達には申し訳ないんですが所謂“高校生の恋愛”のような擦れ違いや行き違いや劇的な誤解があるわけでもなく、そのまま日常なんだけど、その語り口がまたいい。
モンティニー男爵さんが全編語るのですがこの人すごい……いいなあ……。
ワクワクする、というよりかは底の方で水が沸騰するみたいにいい。
過剰に装飾するわけでもなく、特別上手いことを言おうとするわけでもなく、膝を打つような切り口でもないんだけど、次を読みたくなる。その意識がないままどんどん先を読んでしまう。
平均という意味では普通ではない。端で良いわけでもないんだが、ある種の落ち着き、というか…うーん、とても物語らしい日記を読んでいるような。語り口調が読者を意識してのものだった。いいよー いいよー。

久しぶりに恋愛(をしている人を中心に書いている)小説を楽しいと思った。
一気読み。言われて初めてこれが 不倫小説 であることに気付いたり。
ああそういえば不倫でしたね… するの女性ですけどね…。でも男爵も危ういよね…? フラグ多いのは大嫌いな癖して男/女の浮気はどうでもいい。
いい気も悪い気もしないし、嫌いでも好きでもないし、やった人間を弾きもしなければ興味が湧くわけでもない。好きにするといいよ。楽しければ好きになるかもね。
書き方にもよりますけど。体から臭いがしたのは深読みすると大分あれれなことになるからスルーしよう(笑) でも体の関係があろうがなかろうが“浮気”はやっぱり気にしないんだよなー。
作中では不倫をしている女性視点がないし実際そういう現場を目撃するわけでもないので生々しくはないかも。そういう悲劇を狙っているのでもなく。

政略結婚。高額の持参金。田舎貴族に持ちかけた叔父の計画。
評判の悪いルナダン氏。魅力的なダニエルさん。
叔父さんの奥さん、侍女のアガート、屋敷の面々。
三人の計画には思わず笑ってしまった。しかしそれで無罪放免にしてしまうのが男爵さんだと思うんだあ。
狼男爵の昔話。狼を狩って回る領主。
ああ、奥さんであるドニーズの「私はあの狼が欲しいのです」(P218)はよかった…!
ダニエル、叔父、ルナダン合わせての会話もよかった! (ルナダンさんの今後について)

派手なあらすじを書くなあと思うことはあっても あえて“もっとも地味”と表現することはあんまりないねえと思って読みました。あと佐藤さんの作品を幾つか読んでみようと思ったから。
 正しく洗練された恋愛小説 かどうかは解りませんが、地味のあとにこの言葉があったからそこまで反発もしなかった。だってあらすじで地味って言う人が使う「正しい」という言葉の意味をわたしは知らない。
から、興味が湧いた。(これ書いた人結構好きかも)

実際読んだのは朝日新聞社から出てる単行本ですがアフィリエイトに文庫しかなかった。文庫だと光文社。(ミステリー) しかも500円だったから思わず本やタウンで注文をしてしまった。いやだってこれ500円て。
文の量としては結構ぎっしりだと思ったんだけどすらすら~と読めた。
他にも読みたい!


カバーデザインは坂川栄治さん、藤田友子さん
カバーイラストはビアズレー「髪の毛盗み」夢
(※文庫)

(カバー画は フランツ・フォン・バイロスさん
装丁は鈴木成一さん)(※単行本)