DZ(ディーズィー) (角川文庫)/小笠原 慧
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【アメリカ・ペンシルベニア州で、夫婦の冷凍死体が発見された。
五歳の息子は行方不明のまま、事件は迷宮入りする。
一方、日本では、異常な兆候を示す少女がいた。
数年後、恋人を亡くし、重度障害児施設に赴任した女医・志度涼子は、保護室に閉じ込められた少女に出会う。そして、運命の歯車は容赦なく回り始めた。
人類という種が背負った哀しい宿命を、壮大なスケールで描いたヒューマン・ミステリ。
第二十回横溝正史賞正賞受賞作。 】


面白かった……。

■ 感想とか色々~

最初、視点がころころ変わるのでちょっと混乱。
ソーシャルワーカーの美人なお姉さんや、
世間と関係を絶って隠遁するように暮らしていた夫婦、
日本の研究生石橋さんとその恋人の志度涼子さん、
石橋さんの留学先で素晴らしい論文を書き続ける超人じみたグエンさん。
異常な知能数を示す少女とその夫婦。
殺された夫婦の犯人を追う 老刑事のスネルさん、マタニティクリニックの女医、ヤンさん。
重度障害児施設の院長だとか大木さんだとか太一くんだとか。

基本的には遺伝子のお話。
遺伝子と赤ちゃんと殺人と新種のお話。
グエンさんが神出鬼没で困りました(笑)
石橋さんと研究しているかと思えば、そのあとはヤンさんの恋人として一緒にクリニック経営しているし、最終的には日本の水田さんが書いた論文を読んでこちらにまで来ちゃう。
スネルさんの視点も入るけど段々と解ってきた。
基本は石橋、志度、ヤン、スネル、一回だけ水田さんかな。グエンさん視点がないのがとてもいいよ。そして犯人自体は最初の方でなんとなく解っちゃうんだけど寒いのが嫌いな人のために凍死させなかったのがとても偉いと思う。(あってないような思いやりですけどね)
生物関係、重度障害児施設はごめん障害ナメてた。と思わず思うような子達がたくさんいました。
読むだけでも辛かったのに実際に見たら 外見で人を判断するな というのが覆されそう。
(外見も一要素だとは思うので 判断するな というのは可笑しい気がしますが。言うなら 外見で差別するな 一括りにするな 解った気になるな だと思う。区別と差別も曖昧かな)
クリニックも結構……えぐいけど……うあー……読むの辛かった……。
痛い。掻爬は嫌。掻爬は嫌。掻爬は嫌。嫌なんだって……。
最後の方なんかどこどこ人死んでくし一人一人殺し方違うあたり おおすげえ とか思わず思っちゃったんだけど痛いから! 大分痛いから! 殺しすぎだよ!

グエンさんは好きだが怖いなー そしてどこまでも虚しい人だ。
孤独だから死を選ぶのではなく孤独だから他を殺して種族を作ろうとして気付かなかった。
種の保存本能なんか知りゃしませんがね、いいなあ、最期報われてないのが凄くいいよ。そんなに遺したかったか。
ふぅん……憎しみ故ならまだ解るけど。そんなに憎かった?
論文の評価すらあなたにはどうでもよかったのね、石橋さんを殺したのすらあまり気にしない。妹さんの人生ってなんだったんだろうくらいに酷いけどねえ。(この子はもうちょっと報われてもいいかなあ)

唯一嫌いなのは志度さん(笑)
前半好きだったんだけどなー 最後の一文もよかったし、だからまあそうなるのはいいんだけど、物語的に見るのなら意外なダークホース。
好きな男を殺した男を好きになるにしても、ある程度の過程は欲しかった。
なんでだろう…… 凄くムカついた。水田さん関係かな。はっきりすればいいのに。言わずに解ってもらおうとするのはちょっとズルいよ。
理由の全てにするつもりはありませんが、弟さんがいたからまだ平気だったのかな、とも。
グエンと妹さんが一緒にいられたならもっと違った…かもしれない。ああでも憎んでいたから殺したのなら(その上で、支配しようとして孕ませたのなら)関係ないか。
ネリー・ヤンもそこまで好きじゃなかったし、女性陣はナチュラルにカチンと来るというかムカつくというか自意識過剰っぽくて自分で完璧なんて言って酔ってる女は(男もだが)嫌だなあ、と。
なんで西村少女が庇うのか…兄だから? 骨肉の情ってあったの? というか全部解ってた? この子視点があってもよかったかな、なんで庇ったのかが解らない。
やーもーグエンさん好きだなー 絶対会いたくないなー!

まあそれにしても最後で全部持ってかれますけど ね!
まさかの征くんでした。志度さんの弟さん。あの引きは上手い。
5時間はかかったかも、噛み砕いているんだろうけど遺伝子関係の所を読むときは疲れた。
(サバイバー・ミッションの続編でない)他の作品も読んでみたい。