ひかりをすくう (光文社文庫)/橋本 紡
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【智子はパニック障害の治療に専念するため仕事を辞めることにした。
一緒に暮らす哲ちゃんと共に都心から離れて始めた新生活。
細かな不安を抱えながらも、何気なく過ごしていく日常が、智子をやさしく癒してくれる。
そんなつましい生活を続けるうちに、薬を手放せなかった日々がだんだんと遠いものへとなっていく。
ひたむきで一生懸命な「疲れた心」に響く一作。 】

書きにくいねえ。

■ 感想とか色々~

過去、グラフィック・デザイナーのお仕事中の智子さんと、現在、哲ちゃんと一緒に暮らしている智子さん、二つの視点。
別れた奥さんのことや、哲ちゃんがそこの事務所にやってきた理由、
恐怖と混乱の発作、限界を超えたとき、それでも待つと言ってくれた人。

引越し場所の選定から始まり、智子さんが頑張りすぎているお仕事に戻り、病院に行くことへ進んで、不登校の子の家庭教師を引き受ける。
お姉さんの家出、父親との不和。
簡単な言葉で括った中に含まれて、見落とされるたくさんの大事なもの。

P136 わかりやすくすればするほど細かい部分が消えていっちゃうし、その細かい部分のほうが大切だったりするんだから が好きー。
そう言って、そう言われたあとで、
「彼氏がね、学校に行こうって誘ったみたいだよ」
「ああ、そういうことか」
(P261)
とまとめたのが素晴らしいと思う。
便利な(流行の)言葉で括るのって大枠はあっているけれど、隅っこが違うよ、その違う隅っこが大事なんだよ、のあとに、彼氏がね、学校に行こうって誘ったみたいだよ、という……なんか……ものすごい、なんていうんですか、“単純”になったこと。
不登校で英語が好きな小澤さんの葛藤や不安を全部飲み込んだような。
好きな人の一言ってそんなに偉大か? まあ偉大かもなあ。影響力は大きいか。ああ、学校に行きたくない理由を小澤さん自身が解ってたからかな。

引越し場所を探しているときの2人の会話もよかったけどね!
キヨスクないのがいいんだって。都会すぎるんだって。のんびりしてるなあ。
不動産屋さんとのやり取り。哲ちゃんが頼もしい(笑) お菓子美味しそう…。

薫さん(温めていた企画を待つと言った人)が男前でした。
男前のお姉さんはいいね…。
電話のときの会話のテンポもよかったけどねー でも実際にあれやったら息苦しいだろう。
(死ぬことそのものよりも、死にたくなるくらいの痛みの方が怖い。突然死も怖い。息苦しいことが嫌いなのは(まあ時々面白いんだけど)、それでも身体が生きようとするから。)
呼吸が出来ない。

精神系の病気はよく解らないし知らないからなんとも言えない というのもある。(病名付けりゃいいってもんでもないんじゃねーの とは思うけど 実際に苦しんだことがないからなあ)
ぐうたらだからねえ… 頑張るってなんだっけ…? としみじみ思う。
全力で頑張ってる子もまあ好きですが 全力で頑張らない子も結構好きです。智子さんはがつがつ仕事やったからかなー と。なる理由なんかひとつじゃないか。

元奥さんも出てくるし遺産分配とかないのでもないんだけど、それでもゆるーく進みました。
刺激はないかな。盛り上がりはあるか。奥さんと久保(事務所の上司)さん。
同棲よりも同居に近い男女の日常。

カバーデザインは髙林昭太さん!
写真いいなーと思って図書館では借りずに購入。