狭間の広場
いかづちの剣〈2〉 (角川スニーカー文庫)/小林めぐみ
\567Amazon.co.jp

【惑星カヌーアの「決戦」によって父をなくし村を追われた少女トワは、父の同僚フィル、行商人イナギ、幼いタクとともにアンドウの街をめざした。
しかし、記憶をなくしているフィルが「決戦」の総司令官で現在アンドウの市長ハズノ・サボンワーズを殺してしまう。
同時刻、市庁舎はゲリラの攻撃を受け、アンドウの街は大混乱に陥る。
壊滅したはずの、機械の帝国「エヴァアランド」は生きている!?
いま全ての謎が明らかに!! 衝撃の完結篇。 】

見事にすれ違ったな。

■ 感想とか色々~

アンドウの街を治めるサボンワーズ父子。
独裁政権と治安維持部隊の隊長。
風街のマシュウは元将軍で、ミュラーは街に残り、ヨッカは父親の遺志を継ぐ。
“溺死したダイバー”・オリビアからの手紙。革命軍の間にある摩擦。繋ぐ人間。
ほしかった手がかりと知りたくなかった事実。フィル・ゲイリと軍曹。
「光の日」の再来。神さまを求めた人工知能。求めさせた人間。
人工知能が作った「人間」は機械か「人」か。
聖書に載っているのと同じ名前を持った19人の聖者達が持つ聖剣。


1巻での「フィル、ハズノさん殺害」から始まり、同時に始まるゲリラ達の攻撃。
変電所奪ったのはやるなあと思ったが腹の探り合いは老獪な方々の方が上手でした。そしてぐでんぐでんなゲリラ兄さん姉さん達(笑)
すっぱりやり遂げた革命って逆に珍しいんだろうなあ…。

1番衝撃的だったのはミュラーでした。ミュラー!
ヨッカのお兄さんは、言っていることは正しくないがやっていることは正しい人、として受け取ってる。正しいという表現は曖昧だが。思想回路にはなんら賛成できないし同調もしないが、兄さんの行動自体は大分いいと思う。(限定的にであれば、この人は父親をどう思ったかに対して、それを思った自分自身に対して、とても正直だったと思う。あれは好き。)そのヨッカをして「いい部下」と言わせたミュラー! 率直で単純で端的なこれ以上ない褒め言葉だと思うの!
なのに い き な り 腹 か よ ! という驚き。(挿絵付で更に破壊力倍増)

ちなみにイナギのお兄さんは大体1巻通り(笑)
いやしかし……この人がいると………場が和むなあ………。
1巻でテンション低かったのはトワとフィルだったからだ、と気付きました。
姉さんは自分で自分を思い詰めるしフィルはにこやかに笑ってたり殺してたりで。
イナギとタクでようやくトワが中和された。タクとイナギが同レベルでじゃれあってると安らぐ。
ヨッカはミュラーが出てくると安心できるが、トワと接しているとハラハラする。反射レベルで「こいつは天敵」と思うトワがすばらしい。

抜け殻だったはずの「フィル」に詰まっていたもの。
本物であるはずの「フィル」がトワにさせようとしたこと。
コゴリに始まり、最初の川転落一週間捜索からもう伏線だったり。
神さまを信じた人間に神の声が聞こえないというなら、神さまを信じていない人間が神の声を聞かせる役目を担ってもいいんじゃない? と思いましたがそれって物凄い皮肉ですよね。本人(トワ)にとっちゃ大迷惑。
まあ「お父さん」だったらしいけど。この子が取り乱すと突っ走るから怖いのなんのって。
トワとタクとイナギの三人でフィルのお墓作ってる所で終わらず、「作戦」の最初に戻ってしめた引き際が、すごい、いい。
あれは――なんというか、とても痛い。ちょっとだけ虚しくて、暗くないはずなのに悲しい。
最初から(上)(下)と表記してくれていたなら足し算をしていたと思う。
(ああ、上下(もしくは上中下)で終わらせるのね、というのが見えるから。)
予想外に楽しかったー。完結。

イラストレーターは羽住都さん!
イナギが意外と童顔だった。カラーは上手いけどモノクロが残念。

狭間の広場
いかづちの剣〈1〉 (角川スニーカー文庫)/小林めぐみ
¥567Amazon.co.jp
→(感想