沙漠の国の物語―あざなわれし者 (ルルル文庫)/倉吹 ともえ
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【「砂嵐の後継者」という怪しい義賊がもてはやされ、「星読みの徒」という古の民族の思想がはびこり始めた沙漠で、ジゼット達はカヴルとタラスファルの復興のために奔走していた。
そんな中、ラビサの仔リグーが行方不明に。
東の果てまで探しに出たラビサは隻眼で鷹を操る男ゼクスと出会い、ある事態へと巻き込まれ…。
いよいよ沙漠に動乱の幕が開ける! ラビサやジゼットの運命が大きくうねり始めた。 】

じぜっといじめんな!

■ 感想とか色々~

うわー 今回ラビサが大分残念な子に!
隻眼の鷹使いはゼクス。遊牧民の男族長。
男勝りで誇り高いのはビッキ。遊牧民の女族長兼族長。
共にジゼットの「昔の知り合い」だそうで。

カヴルのこれから築かなければならない新しい道をハディク(ラビサの兄)が提案する一方で働く妨害工作。
血に濡れて帰ってきた鳩。
人を殺すことを愉しみとするザクロを頭にして「義賊」ともてはやされる「砂嵐の後継者」。
ジゼットとラビサがまたもや別行動……! と思ったらクックとマフーの間に生まれた子が盗まれて それを探しに行った結果めぐり合う(笑)
アリヤも今回リードゥの傍にいたし。ラビサがいないと…… のついでに「ジゼットも」と言ったからよし(笑) 姉さんと兄さんはピンでもそこそこ楽しいが一緒にいたら掛け算するみたいに楽しい。

ゼクス兄さんはラビサを気に入ったそうですが 嫁入り前の娘さんに気安く触んじゃねえ とか素で思ってしまった……わたしは姉さんの父親か。
ゼクスさんは多分好きな方だと思うがひょいっと姉さんに触る。飄々としている人は基本的に好きだし、姉さんがそれを嫌がっているのでちょっとホ。
俺史上最大のまずさだ も面白かったですけどジゼットさん(笑)
いやしかし出かける前のあれは段階踏むタイプじゃなかったの!? と思った。わたしあの台詞大分好きらしい。それともあれって挨拶?
急いで天幕突っ切ってるジゼットを、遊んでいると勘違いして追いかけてくる子供の件とか素敵過ぎる。

ビッキも嫌いじゃないんだよねー。
この人のことには、ああそうそう、と頷いてしまった。そうなんだよなあ。
うんわたしも嫌い。そんな女は大っ嫌い。でも、この手の“明るくて無邪気で人を疑わず突っ走っる”女の子にしちゃあ珍しく、ラビサ嫌いじゃねえんだよなあ。どうして嫌いじゃないんだろう、って1巻からずーっと思ってる。6冊ラビサに付き合ってきたけど、少なくとも嫌えはしない。
要素だけなら嫌いなんだよねえ。ただ、数値化できない能力もある。言葉で言い表し難い能力もある。目に見えず手で触れられずただ「感覚」としか言いようのない、もしかしたらそれすら違うかもしれないけど、「受け取る」なにかもある。
ラビサを嫌いならラビサを好きなジゼットも嫌いになることが多いし、ジゼットピンで好きだとしても、やっぱり兄さんと姉さんがお互いを大事にしてくれているのは読んでいて嬉しい。ペア(くっつく)前のコンビ(仲間感覚)で。
遊牧民の人々を読むとタラスファルの人達を思い出す。仲が良い…。

あー あと 兄さんがずっと不安定だった。
ぎゃー兄さん! もうやだ兄さん頑張ってるよ兄さん! と思った。
すげえ頑張ってるよわたしジゼット大好きだもん!
特技:……沈むこと? くらいの勢いで暗い兄さんが(好きなわりには言うことが酷い)いいんだよ それでいいんだよ。それがいいんだよ。
女の涙で揺らがなかった件とか惚れ直す勢いだ。
そうだよ違うよ正反対だよ水面に咲く花でラビサが全てを信じるならそれを片っ端から疑うのが俺の役目 みたいなこと言ってたじゃん。同じだったらひかれるかよ違いなんてジゼットが1番解ってるわ。
仲間を殺したことを仕方の無いこととしていても、どこかで痛いと思っている兄さんが好きだよ。負い目に思う兄さんが好きだよ。
ラビサの傍で笑ってる兄さんが好きだよ。
ちったあ根性見せろや兄さん以外の年長組! とか思ってしまう…。
タラスファルの人達が悪いんじゃないんだけど。ただまあ、組織の体制としてジゼットがいなければ回らないというのは問題があるし、たとえ問題なくたって兄さんが苦しんでいるのは嫌。痛いのは嫌。
ジゼットを除くタラスファルの人達とジゼットのどちらか一方が苦しまなければならないならどっち? だったらわたし唸った末に前者を選ぶ。
あの目は嫌だ。怖い。怖い。戻らないで。そっち行かないで。蓋をする必要も目をそらす必要も無い。だけどもしそれと相対すると言うなら、引きずられないくらいのなにかを持ってからか、兄さんを引き戻すだけのなにかがある人と一緒に踏み込んでほしい。
人を殺す人は怖いよ。そこに感じる本能的な恐怖を否定したらそれこそ嘘くさい。だからわたしはあそこでラビサに 怯えるな とは言えない。
ジゼットが後悔していて、それを許されるためにではなく事実として背負っているから、その姿勢とか心の持ち方が好きだよ。
それを痛いとか息苦しいとか重いとか思うのなら。
人を殺した夜、悪夢を見るというのなら。

ラビサに剣を持ってほしくないのはジゼットの自己満足だけどねー。
ゼクスさんもそうだけど、ラビサに人を殺してほしくない理由が「こちら側」に引き込みたくないだったら怒るんじゃないかな。
もしそれ以外の理由で人を殺してほしくないのであれば、わたしにはよく…解らないことだろう、と思う。多分、嫌なものに触れる。どうしようもないものに。
全然解っちゃいない、って、でもラビサがそのままでいることを自分に許すような娘だったら、兄さん惚れてた?
足手まといになること、期待をされない、頼りにされない、邪魔扱いのままでいること、背中に庇われること。
巻き込む覚悟がなかったのもそうだろうけど。兄さんはもっと自分自身のことに構ってよ。
旅出ようよー きっと楽しいよー! 兄さんが沈むと自分じゃ持ち直せないからどんどか沈んでくー…。


2人成長したーーーー!! とか 好きな人って認めたーーーーー!! とか 登場人物紹介でジゼット20歳ーーーー!!(年取ったよね?) とか色々あったんですが吹っ飛んだ。
いやしかしP219から数ページは甘くて吐いた…。あそこが今回唯一の和みかもしれん。
リードゥ連れ去られちゃったり不穏なまま以下続刊。

イラストレーターは片桐郁美さん!
(手を合わせて) ごちそうさまでした。
P42とP229は何事かと(笑) わーいわーいくっついてるー! とかもう喜んだ。
P127のゼクスとジゼットの共闘もよかったけどねー、鷹のお兄さん予想はしてたけど喰えない人だ。
そしてハディクが以外に幼い。表紙のラビサが美人さん! 美人さんは好きだがラビサは子供っぽい方がいい…。(珍しいものに目を輝かせるような)
あー…… P246までちゃんと描いているからかも。
あとジゼットが殴ったおっちゃんね。盗賊稼業から足を洗えない人。
表紙四人はアリヤとアリヤの姉さん以来~。


沙漠の国の物語―眠れる望楼 (ルルル文庫)/倉吹 ともえ
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