乙女虫 奥羽草紙 ―雪の章―/澤見 彰
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【物語は、鷹と仔犬を連れた浪人と、男装の少女の出会いで始まる。
彼らを追うのは、雲助、剣豪、妖し! そして、彼らが追うものとは!?
俊英が描く、渾身の時代活劇、ここに開幕。 】

むー………。

● 登場人物

林太郎
本名は矢坂りん。男装の少女。迷惑な女の子でした。
兄の仇討ちということで関所抜け、騙されて身包み剥がされそうになっている所を助けてくれた人と一緒に旅をする。

楠岡 平馬
鷹、子犬と共に旅をする男。脱藩中。りんを助けた人。
腕は立つがあまり刀を抜かないご飯を食べるのが大好きな人。
ゆるい人だったなー。


■ 感想とか色々~

りんの目的は兄の仇討ち。
平馬の目的は追っ手の目を掻い潜りながらある場所まで辿り着くこと。

半ば無理やり付き合わされる形になった「恩返し」から始まり
仇討ちの理由やその人物、だけでなく途中通りがかったお殿さまとの勧善懲悪物語、でもあった気がします。

が、しかし平馬が報われないなー……。
それにもましてりんを迷惑な人だなあと思った時点で大分決まっちゃったようなもんですが、どうにも中途半端だった。
りんが役に立ってないのに口先だけで強がっているのを読むと、イラつくのなんのって(笑)
なにこの偉そうな子ー と。平馬がそれを良いと言うのなら良いのは良いんだけど、だからってわたしが嫌だなあと思ったのが消えるわけでもなし。


男と女が連れ立ってある山の中に入ると襲ってくる 頭大ほどもある奇妙な黒い甲虫がタイトルにもある乙女虫。
結婚前に自害したお姫さまの祟りだなんだと言われていて 生贄を捧げる殿さんや権力主義の家来さんも出てきますが、悪役が詰まらなかったのもあるし、虫に食われる人間がそこまでエグくなかったこともある。
あ、生き埋めにした土の下から伸びている二本の白い腕はよかった!
んー、これ自体がりんと平馬の物語には全く関係ないように……思えたんだけど。
わたしが気づかないだけであったのかな。
いや仇討ちっちゃ仇討ちの部分もあるかもしれないけど、本質ではないし新しい見方でもなかったような気がする。
「ここでこのお話は終わり」とぶった切られた感があるので、上手く繋げられなかったのもある。メッセージ性としてもそこまで面白くなかったし。

鷹と子犬は頭良すぎだろう、と思いつつ、この二匹は出てくると和む(笑)
特に鷹に頭をつつかれている平馬を見ると和む!
わんちゃんも可愛かったよー! 鷹もよかったよー!
そして一番幸せなのも叶ったのもりんでした。
わあもう、平馬さん!!! と思った。あんな危険まで冒したのに!!
なんだかんだで大切にしてくれたのになあ。

時代としては開国前。
三巻完結だそうですが、続きは多分読まない。

装画は浅野隆弘さん。