星のひと/水森 サトリ
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【第19回小説すばる新人賞受賞第一作。
特別な存在でありたいと願う中3のはるき。
ある日、同級生の草太の家に隕石が落ちて来たことに嫉妬して、UFOが呼べると言ってしまい…。
星はめぐり、人々はつどう。生の輝きを描く瑞々しい連作集。 】


■ 各話の感想とか色々~

ルナ

はるきと槙野草太と亜子と七海のお話。
はるきはここは自分の帰る場所ではないといい月を仰ぐ。
クラスの人気者・草太の家には真夜中隕石が落っこちてきた。
草太が好きな亜子は気をひきたくて逆効果。
間でおろおろする気弱な七海はどちらにもつかない。

わたし亜子とはるき自身そんなに好きじゃないんだけど
「わたしが低次元だって言うなら、じゃあ、はるきはどれほどすごいこと考えてるの。
ねえ、教えてよ。はるきはどれほどすごい人なの」

この台詞は好き。
ここじゃないどこかに帰りたい、ここは自分の本当の故郷じゃない。
やったことがないだけで、まだ知らないだけで、自分は特別なことが出来る。
むず痒くなるこの考えってお話で読んだことはあっても「ああ、そんなこともあったあった」とは思えないんです が。
女の子の成長のひとつである初潮をね 宇宙人 と言ったのは凄く好き。
得体の知れないもの。勝手にやってくるもの。理不尽で圧倒的な証。

未確認飛行物体を呼ぼうとした女の子。
七海ちゃんはさておき亜子ちゃんは残念な子だったかも。
自分の家におちてきた隕石が原因で喧嘩になったと悩む草太くん。
この子可愛い……(笑) 「……声とか」が好きでした。


夏空オリオン

槙野家のお父さん:草一郎と、お母さん:幸恵さんのお話。
離婚の危機。胃が痛くなるような会社の「三代目」。できちゃった結婚。
ヒーローの背中のファスナー。「いい子ちゃん」だけではなかった草太。
元耕平、現ビビアンな隣家の元息子。隕石での騒動。休めない仕事。

わたし幸恵さん大嫌ーい。笑いながら言えるよどうしよう。
こういう女性もいるんだろうけどでもダメ、受け入れても価値はない。
やることやってて避妊もしてないのに土壇場でぎゃーぎゃーと煩かったなあ。
「人殺し!」と言い切った耕平くんに思わず拍手したくなるじゃないか。無邪気な一言。
草太くんが可愛かった よ……!
いやでも「孤独」と表される大体のものはちょっと引いちゃうんだけど。

草一郎さんは「優しすぎてにっちもさっちも行かなかった人」でした。
生きていく力が弱そうというか…サバイバルで真っ先に死にそう。同情出来ない。
会社の人達が駆けつけてくれたのは嬉しかった! 一秒だっていられない。
ああ、幸恵さんが苦手だったのって、自分自身でけじめをつけなかったことかも。
離婚に踏み切る自分ルールが「草一郎さんにある一言を言われたら」でした。ずるい。


流れ星はぐれ星

元耕平くん 現ビビアンさんのお話。
ゲイは確定だけど心も女の人なのかな?
また……とんでもない男に引っかかりそうな…性格の人で……。
槙野家に押しかけるまでと押しかけてからをビビアンさん視点で。
小さい頃のお話もアリ。
同類見つけましたか沢田さんってわたしには理解できない異界の言葉話してるけど。


惑星軌道

草太視点のお話!
ぎゃーこの子視点で見るとはるきちゃんが可愛い!
思わずちゃん付けもしちゃうぞ。
おやすみメールか電話て君ら。やらないと翌日淋しそうって君ら。
はるき視点もありますが相変わらず複雑な女の子だ。

初登場:高宮明浩くん。
草太を太陽みたいなと評し、草太からひまわりみたいと評された男の子。
乱暴者で不良扱いされていますが若干ツンデレちっく。
隕石が欲しくて言えない子。
弟さん:光浩くんとは親の離婚のため離れて暮らしているそうで。

草太のお父さんの人望だったり ビビアンの人脈だったり
あとありえんくらいわたしの中で急浮上した幸恵さん!


「あんたも女の端くれなら、しゃんとしなさいよ、しゃんと!」



前半はスルーで。

はるきちゃんが高宮くんの名前呼んでいたことに怒るなら
お前だってビビアンさん…! と思っちゃっ た。いや可愛いよ2人とも。
巻き込まれて左腕負傷。船に乗せられてどんぶらこ~。
ずかずか嫌ーな所踏まれたかと思えば同じくらい素敵なところもあった感じ。高宮くんと七海ちゃん、草太とはるきのお話も読みたいんだけど、水森さんの新しい作品も読んでみたい。
水森という名前も結構好きだったり。
250くらい。さくさく読めました。

装幀は大久保伸子さん、カバーフォトはkohei Haraさん。