セイジ (光文社文庫)/辻内 智貴
¥520Amazon.co.jp

【いまはもう寂れてしまった国道沿いの一軒のドライブイン。
そこで、僕は、ただ純粋に不器用に生きる青年セイジに出会う。
「人間って何だ」「人生っていったい何だ」
そんなことを考えながらも気のおけない仲間たちと楽しく過ごしていたある日、目の前で奇蹟は起こった。
文壇を騒然とさせた話題作。太宰治賞作家の原点とも言うべき名作。
「竜二」を併せて収録した。 】


● 「セイジ」の登場人物

店を開くためだけに生きているようなセイジさん
お店のドアを叩いて乱暴に起こしたカズオ
お店のオーナーである翔子さん
樵とそのお孫さん。

主人公は自転車に乗って旅をしていた「ぼく」。


■ 「セイジ」の感想とか色々~

結構あらすじまんまのお話でした。
感想というよりも薄ぼんやりと考えていることを中心に。

「なんのために生まれてきた?」と「なんのために生きている?」というお話。あるひとつの悲劇的な事件からどっと浮き彫りになったけど、
セイジさんは多分そんなことをずっと考えて生きてきたのかなあ。
どうだろう、なにかのためでなければ、生まれてきちゃいけないってわけでもないのに。

どれを責めるわけでも、どれが正しいわけでもなくてひとつの「意見」でしかないけど。
それを考えて、答えを出して、なにをどうしたいのか――どうかしたいものがあるのかな。
わたしにはないから解んない。
「考える」という言葉を使うほど真剣に考えたのではなく。
脈絡なく思ったことしかない。
論理立てて考えることって出来ないから、パッパッて珠算みたいに浮かんだこと。
そもそも「なんのために生きている?」を考えるのって「本を読む」のと同じ分類だからな。
「それを探すために生まれてきたんだ」っていう本末転倒なのでも構やしませんが煙に巻かれている感じはします。
意味が欲しい人は探せばいい。面白い本ないかなって本屋うろついているように。
贅沢な悩みだってことさえ解っていればあとはご自由に。
可愛らしくはある。


セイジさんやセイジさんみたいな人と話してみたいと思うけど、多分堂々巡りだろう。そもそも「言葉にする」なんて体力使うことをしそうにないな。
とりあえずこの家にいつか変死体があっても驚かない。
この人の死に顔ってどんなだろ、いつも通りの顔で死んでそうだなあ。
苦悶も安らかな寝顔もどちらもなさそうだ。


問題提起のような真面目なお話かなあと思っていたら、お孫さんの
「……だって、私、神さまを目の前で見たんだもの」で鳥肌。
ああそうか、あれを神さまと言うのか。血まみれで乱暴で死にたがりの神さま。こじ開けた人。聖書や教典に載っている神さまとはまた随分違う。
崇め奉る。神格化された人。精神か行為そのものか。
セイジさんはそれを知ってるのかな。
動物愛護団体の件は大好き! こういう人達きらーい。



● 「竜二」の登場人物

真面目になろうとしてもなれないギター弾きの竜二
竜二のお兄さんで自衛隊の高志さん
40代くらい(だと思う)視点の「私」。


■ 「竜二」の感想とか色々~

若かりし日頃の青春をそのまま生きているような不器用な竜二と
そこそこ社会に迎合して生きていた「私」の物語。
竜二が見ていた夢と怖いお兄さん。歌を歌うきっかけ。
お母さんの葬式、早々に帰る弟と、いつか見た夢のリプレイ。
自衛隊かっけえ。いや村井さんがかっこいい!!

「息子」と「弟」の顔しか持ってなかったのかなあ。
お兄さんの一言で始めたんですね、強調点がセイジでも多くてちょっとあれーと思ったけど。
褒められるのが二度目だといいな。
自衛隊の敬礼ってどうしてこうかっこいいのか。


200ページくらいだったのでさくさくいけました。
2時間くらいかなー。淡白。