公園で逢いましょう。/三羽省吾
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【『ひょうたん公園』に集う人々の“あの頃”を穏やかに描き出す、連作短編集。 】


ママがママになるまで

というとなんかほんわかするような愛情話が浮かぶけど
全くそんなことはありませんでした(笑)
穏やか…そうか穏やかなのか。
切るときばっさりだからシビアに見えたけど。

ひょうたん公園に子連れで集まるお母さん。

面倒見のいいダイちゃんママ
ケータイを弄ってばかりのララママ
マルチ商法絶賛ハマり中のアキちゃんママ
つけこまれそうになっているユウマくんママ
よく言えばまとめ役、悪く言えば仕切り屋のサトルくんママ

1話目の雰囲気がそのまま続くのかと思えば
4話目で快く裏切ってくれました。
んー、でも全体的にいえばやっぱり苦手かも。
「公園で逢いましょう」は「バイ・バイ・ブラックバード」が1番合う。


春の雨はダイちゃんママが傍観者に徹するようになったこれまでのお話。
後味が悪いというほど悪いわけじゃないんだけど「世の中ってこんなもんだよ」と言われているようでした(笑)
小学四年生のとき、一緒に行くよう頼まれた一年生の男の子。
周りの評価と自分の中のズレ。
彼女が嫌っている自分の中のある部分を 嫌いじゃない――と思うのは自己肯定のための一環かもしれない。
ズルさと優しさは良く似ていますよね、というお話。大分違うな。
小塚くんが素敵だ。


アカベーはサトルくんママのお話。
旦那さんのお仕事――というかやっていたサッカーと引退試合。
「芝生」はよかったんだけど…なんだろう、女の人が素直に好きだといえない。
弟・誠治の物作り好きが長じて殺されてしまったペット、それ以来不仲の姉弟。不機嫌でいることを決めたとき。
許すことと許されること。許されたがっていたこと。
プロポーズをされたのに「このままではいけない」という思い。

「電話」の重さは凄く好きだ…!
「弟」に言いたい言葉。相手が息を呑む気配。結婚の報告。


バイ・バイ・ブラックバード
高校の人気者、吹奏楽部所属の瀬川さん。
公園のベンチで古今東西ゲームをやっていた頃で終わっていれば
青春の良き思い出だったかもしれない。

一年後。
お金が必要になった瀬川さんと臭いで目の前にいる人間が危ないかどうか解るわたしで始めたバイトは、
援助交際をした相手と手を切りたい女の子からの依頼。

なんというか 女の子単身でやばそうな男の人んとこ行ったら「あーまー、そりゃそうなるわなー」でした。
しかしそこで駆けつける瀬川さんはどこぞのヒーローだ…。
そこですらばっさり切っちゃう。


アミカス・キュリエがこの中では1番好き!

というかわたしは三羽さんの
 奴らは、目覚めた瞬間から活動を開始した。
『腹が減った』『オムツ替えろや』『抱き上げて軽く揺すってくれたまえ』。
それらの要求がランダムに繰り出される。
たまに『なんか分かんないけど気分悪いから泣いとく』というのもある。

こういう部分が物凄ーく物凄ーく好き!!
それがたくさんあったのが「イレギュラー」だったんじゃないかな。

ちなみにこの旦那さん自体は「新しく来る人」の位置づけ。
昔話は奥さんとのナレソメですが これが1番読んでいて(わたしが)幸せだった。
全く違う高校の同窓会に紛れ込んだ「久保っち」。
あだ名は同じだけど右を見ても左を見ても知らない奴らばかり、
目の前に座った幹事の女性はどうやら俺ではない「久保っち」と昔付き合っていたようで――。

ポジティブ思考も好きだけど この旦那さんって良い人だなあ。
どうとでも解釈できるなら、なるべく良い方向で。


魔法使いはケータイ常備のララママのお話。
“親に必要とされなかった子供”。
魔法をかけていたおじちゃん。
実体がどうであろうと定義がどんなに危なかろうと そんなの関係ない。
予想通り――というと失礼か、かつて母が進んだ道をなぞる娘。
足りないものが解ってるなら大丈夫なんじゃないかな とは思うんだけど。
「ケータイ」の真相が意外に可愛かった。


装丁は山﨑裕大さん

文庫版出た!(2011年9月4日追記)

公園で逢いましょう。 (祥伝社文庫)/三羽 省吾
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