出星前夜/飯嶋 和一
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【『黄金旅風』で有家の子どもを救うために呼ばれた外崎恵舟。
しかし、この外崎が南目の代官所に追放されてしまう。
この事件に怒りを覚えた矢矩鍬之介を筆頭とする若衆が終結。
折しも代官所で火災が発生し、代官所はこの火災を集結した若衆の仕業と決め討伐に向かうが、返り討ちにあってしまう。
それは、これまで一切の抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった初めての武装蜂起だった……。 】


キリシタン迫害の裏側

島原の乱のお話でした。
圧政に苦しむ有家村の人達と、長崎の医師・外崎恵舟。
耐え忍ぶばかりで立ち向かおうとしない大人に腹を立てた青年・寿安。
といっても、悪質な病が流行り、子供・老人が次々と死んでいく中、寿安の父の世代に当たる者達が耐えたのはキリスト教徒だったから。
彼らには彼らの理由があって、だけどそれを理解できない時代の流れだったかなあ、とも思います。
止まない嵐を、自分達は耐えられても、それを子供達に耐え忍べ、というのは酷か。
そもそも、根本的な「悪」は領主の松倉家。
二倍の年貢、ころころと変わるお達しに、腐った家臣達。
幕府が奨める禁教を理由に、農民の蜂起をキリシタンに摩り替えての弾圧、処刑、虐殺。

しかし――長い。長い。長すぎる。
540くらいのはずなのに、思ったより長かった…!
読んでも読んでも終わりの見えてこない本書に一体何時間かけたんだろう。
子供達のターン(寿安)は楽しめても、ページ的に多い大人達のターンはあんまり楽しめなかったので時間がかかったのはそれもあるかも。
寿安たちは精力的に動くし、ああ結構やるな(しでかすな)この子達、とも思ったんですが、監物始め――外崎さんは勿論別にしても――繰り返しが多かったかなあ。
そしていきなり出てくる天草さん(笑)
根っこは悪政に苦しむ農民のはずなんですが
あんまり同情できなかったのは先読みが甘かったのもあるか。


よかったのは外崎さんの勉強熱心さ、調合の指示、心意気や行動!
この人が主人公のお話を読みたかった。
漢方関係のお話って読んだことがないのでワクワクでした。
寿安を助けてくれた活林も、勿論寿安自身もよかった。
刀まで買ったのに、死のうとしていたのに、
裸足で駆けつけた「助けて」に返事をしてくれたのは嬉しかったなあ。


日本史必修の授業で先日、有馬晴信や鎖国をやったばかりだったので、
時期的には物凄く良いタイミングで読めたかと思います。
飯嶋さんはこの作品が初めてなので他作品とのリンクが解らない。

■ レビュー拝読!
しんちゃんの買い物張さま/11月30日追記