ジョーカー・ゲーム/柳 広司
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【スパイ養成学校""D機関""。常人離れした12人の精鋭。
彼らを率いるカリスマ結城中佐の悪魔的な魅力。
小説の醍醐味を存分に詰め込んだ傑作スパイ・ミステリー。 】

 ス パ イ  短 編 集 


ジョーカー・ゲーム

テーブルでカード・ゲームが行われるが、
それは見せかけにすぎない。
プレイヤーは、食堂に出入りする者を味方につけ、味方が密かに盗み見た相手のカードをサインで知らせてもらう。

坊主頭の軍人・佐久間さん視点から見たD機関。
与えられた偽名と略歴。
任務に就くときはそれすら捨てて新しい人間を演じる。
任務に失敗したときは相手か自分を殺す、死んだら靖国で仲間に会える、天皇は現人神である。
教え込まれた人間から見た、
プライドが高く負けず嫌いで、能力だけは一流の同僚。
じゃがいもを指してとうもろこしだよって言い続ければじゃがいもがとうもろこしになっちゃうよね、なある意味自分では選べない、選ぶ知識すらない状態で押し付けられた常識。

アメリカ人技師、ジョン・ゴードンにかけられたスパイ疑惑。
当時の日本人なら絶対に触れない一角。天皇の合法性及び正統性。
白い手袋と杖、元スパイで教官の結城中佐。表紙。


幽霊 ゴースト
そしてその時になって、グラハム氏は、夫人が日本で目にした幽霊の本当の意味を初めて知るのだ。

英国総領事アーネスト・グラハムとテーラー寺島の従業員・蒲生。
状況的にはクロ、心象的にはシロ。
物証を探すために動くD機関。

チップを渡す行為が暗号や手紙を渡すために根付いた習慣では と思うD機関が凄い。
結城中佐は全編を通して少しずつ出てきます。第一期生のひとり。忠告と報告。
12人しかいないのに全員偽名だから、他の所で出てきたかどうかは解らない。

「圧力と報酬の問題」。
貪欲に拾う精神と利用できる能力。


ロビンソン
――著者ダニエル・デフォーは、アン女王のスパイだった。

前田倫敦フォトスタジオを開いた前田氏の甥っ子・伊沢和男。
魔王の口笛。スリーパー。口の軽い外交官。セックス・スパイ。
拷問と自白剤。暗号文の癖。二重三重の意識。人格のコピー。
手渡されたのはロビンソン・クルーソー。
錬金術に通じた人。スパイ小説。
脱出劇。


魔都

上海に派遣された本間英司憲兵軍曹。
及川大尉から任されたのはある極秘任務。
最初はD機関じゃありません(笑) すっかり疑って読む癖がついてました。
抗日テロと爆破された家。死んでいた人間。
襲撃と、ここで、あれ?と思う人も多かったんじゃないかと。
かつて取り締まった人間との再会、新聞記者としての行動。
会員制の極秘賭博場。恋人の仇。

デンジャラス、デーモン、デヴィル、ダークネス。
D機関の由来はなんであるのか。
5年間の魔都で壊された男。


XX ダブルクロス

貴様は、D機関への採用がなぜ男だけだと思う?

女は、必要もないのに殺すからだ。
“愛情”や“憎しみ”などといった、
取るに足りないもののためにな

D機関の卒業試験。
名前を捨て、過去を捨て、新しい名前と使い捨ての略歴を与えられ
個を殺してなりすまし、時には自分より大きい男を投げ飛ばす。
必要であるならチェスもするし、写真も撮る。

死んだのはドイツ人カール・シュナイダー。
極めて特異なタイプのスパイ兼記者。
請け負ったのは飛先。結城が拾った馴致不能。
天皇を祖とする軍隊の擬似家族に耐えられなくなった人。
とらわれてはいけない。西山千鶴と似ていた女性。


ものすっごい殺伐としたお話でした!
「騙される方が悪い」をどこまでも地で行くお話。
しかし、短編集への悪いイメージ――起承転結が浅い、すぐ先が読めてしまう、物足りない、展開が速い、などと言った印象を改めるくらい面白かった…。
密度が濃い。スパイのお話だというのにこれほど話ができるのか。
そして集められた地方人――非軍属の人達の能力が呆れるくらい高くて、そういう意味でも安心して読めました。

装画は森美夏さん。
挿絵はありません。この表紙だけですが、どうしよう結構好きかも。
他に書いてないかな。
どんな帯がついていたんだろ…。

文庫版が出たのでぺたり。追記H23年6月18日

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)/柳 広司
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