きみが見つける物語 十代のための新名作 休日編 (角川文庫 あ 100-103)/角川文庫編集部
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米澤穂信 「シャルロットだけはぼくのもの」
(「夏季限定トロピカルパフェ事件」所収)

「これはね」
 秘密を告げるように、真剣なまなざしで、
「わたしの、この夏の運命を左右する……」
「運命……」
「<小佐内スイーツセレクション・夏>」
 ぼくはゆっくりと玄関のドアを閉めた。

小動物系の小佐内さんと無害そうな小鳩くんの、甘いもの争奪戦。
「もうひとつの夏の運命」は置いておくとして、
デザートひとつ食べるのにも命がけで気の抜けない彼らの日常。
休んでないじゃん!(笑)


万城目学 「ローマ風の休日」
(「ホルモー六景」所収)

「さあ、やるよ―――少年」

野暮ったい女の子と数学の問題。
バイト先の「ぎこちない動き」をする大学生。
川と橋の問題は面白かった! が、言っていることが訳分からん!(笑)
とりあえず渡れないことだけは分かりました。その理由も。多分。
展開が早すぎると気付かないものかね。俯きっぱなしにムカついた理由。


恒川光太郎 「秋の牢獄」
(「秋の牢獄」所収)

十一月七日以前の歴史や、私を含めた人々の記憶は世界を騙すために巧妙に創られた偽物で、
世界はそもそも十一月七日しかなかったのではないか。


繰り返される11月7日水曜日。
ひとりひとり減っていく仲間と、さらっていく北風伯爵。
最後の一文が好きー。
いずれ失われるものを遠ざけるか、失うまで思いっきり大事にするか。
母は後者でした。私は大体のものが前者です。


森絵都 「春のあなぽこ」
(「永遠の出口」所収)

十二歳の私はこの一瞬、自分の立っている今だけに集中し、何の混じりけもないさびしさだけに砕けて散りそうだった。


恋愛に夢を持っちゃいけませんよ、というお話(笑)
永遠の出口全体だとそこそこ好きなんだけどな、これ一本だとそこまで好きじゃない。
いえ、トリは好きですよ。
「お出かけ」の感覚的にも分からない。インドアですとも!
小学生の頃って漢字と卓球しかしてなかったような。

角田光代 「夏の出口」
(「学校の青空」所収)
私にそんなことができるわけがないのに。
妊娠はおろか、そこで会った子とキスしたりセックスをしたり、そんなことでさえこの私にできるはずがないのに。
もし自分がそんなことのできるような人だったら、
そんな可能性を持っているのだったら、
私はもっと自分を尊敬している。


ひと夏の想い出――を作ろうとする友達と、動かない自分。
4人のうち2人は一晩帰らず 2人で食べて飲んだ。
吐きそうになって 獣道を歩いて 星空を見上げた。



カバーイラストは宮尾和孝さん!
この人の絵好きだー。中村航さんの作品の絵を多く手がけていたような。
ただし収録作品に注意しないと読んでるのが大体でした。