東京バンドワゴン/小路 幸也
【下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」。
ちょっと風変わりな四世代の大家族が、転がりこんでくる事件を解決する。
おかしくて、時に切なく優しい、下町情緒あふれる春夏秋冬の物語。】
初見が初見だったもので、正直ここまで暖かい家族の話だとは思いませんでした。
人情味溢れる「下町」イメージの大家族。核家族や老人の孤独死なんてのとは無縁の世界。
■収録
春 百科事典はなぜ消える夏 お嫁さんはなぜ泣くの
秋 犬とネズミとブローチと
冬 愛こそ全て
の四話からなる春夏秋冬の物語。
視点は「東京バンドワゴン」の“おばあちゃん”サチさん。
このサチさんの視点と言うか話口調がまた柔らかくて素敵なんだ。
物語当初から亡くなられていて、時折孫の紺とお仏壇で話をしています。
密会をちょっと覗きに行ったり、ふよふよと浮いているんです。
■登場人物
登場人物が四世帯なのでとても多く、おじいちゃんの勘一と、おばあちゃんのサチさん
息子の我南人(がなと)と、妻の秋実さん(奥さんは亡くなられています)
我南人は伝説のロッカーらしく語尾を延ばすのが特徴。結構色々引っ掻き回してます。
そんな我南人と秋実さんの子供は長男の紺と長女の藍子、愛人の子(紺と藍子にとっては異母弟)の青。
紺の妻である亜美と、息子である研人
藍子がシングルマザーで産んだ花陽(かよ)
作中、押しかけ女房するのが牧原みすず。
それ以外にも藍子さんと同じ画家である外国人のお兄さんや、
読んだ本のレポートを提出しに来るIT企業の社長さん、
小料理居酒屋<はる>の女将さん。
■人の死なない事件
事件といっても人死は出ないし、ちょっと他人の恋愛が絡むとここそあれどそこまで重くならず。混乱する“朝の会話”や、終わらない騒動、小生意気と賢いが同居している研人や花陽の子供陣。
まぁ唯一あれ……と思ったのは、青とみすずさんの関係ですが、「家族」として読むのならそんなのは要らないかもですね。