前田 栄
結晶物語〈3〉 (新書館ウィングス文庫)
【いずれ劣らぬ曰く付きの品ばかりが集う、その質屋。主人の名を、凍雨という。
最強にして最凶の大妖怪を父に持つ彼の楽しみは人の感情を“結晶”として取り出しては、舐め味わうこと…。
そんな彼の元に持ち込まれた此度の不可思議は「黄金のリンゴを探して―…」?
毎度毎度どうして面倒事に関わる、と黄龍の嘆息も虚しく東奔西走のハメに陥るふたり(主に黄龍)。
果たして彼らを待ち受けるのは張り巡らされた罠、神をも畏れぬ妄執、やがて哀しき愛―?
前田栄の紡ぐ当世あやかし冒険諢、胸しめつけられる第三弾。 】
兄さん(ホワンロン)は臓器売買の為に育てられた子供だったそうです。
それを知り逃げ出し、泥水を啜って下水道を駆け巡り、それでも殺された中での、唯一の生き残り。
「last snow」
「人魚」と「白雪姫」の終わり。
凍雨が「父さんを連れてこなくてよかった」と言わせるようなそれは「死者を蘇らせること」。
7人の容疑者、執拗に外された鏡。送られた招待状。
晴香ちゃんがまた登場します。プリンスことレオンも。魂の循環と、愛した者。
なんだかんだ言いつつも、沈んだ気分は凍雨とホワンロンと白夜の会話で向上しました。
背筋がピッと伸びる兄さん。
「その髪は彼が為に」
美鈴さんが関わってくるので白夜も若干動きます。
亡くなった者の生前の意志が原因で起こったこと。
現在では髪切り魔、昔では辻切り魔。
変化でも妖怪でも人間でもなく、今回の相手は「念」だそうです。感情のみで動くもの。
最後に切られたお姉さんが体を乗っ取られます。不憫。
レオンの結晶が使われますが、うーんホワンロン、やっぱり貧乏くじを引かされます。
ラプンツェル。髪だけじゃない?
「虎神の羽衣」
1巻で龍、2巻で朱雀(正確にはその“目”)と来て、今回は白虎。
黄龍の周りに集まる四神関係者、今回は虎の「皮」と「意」です。
どうしてこうも一部分なのか神さま。
題材はタイトルから解るように「天女の羽衣」。
「皮」は白くて小さい虎の形(ほぼ白猫)を取っています。
本体を結界内に残したままの遊興は、結界自体が緩まないのであればと黙認状態で続いていた。
けれど「皮」が殺され、復活したのは60年後―――「意」の居る場所が解らない。
当時、地上に降り立った「皮」と「意」のうち、「意」は仮宿として死んだばかりの若い男に宿った。
その男の妻であった女性が生活苦を理由に、「皮」である猫をを売ってしまったのが起因。
ラストスノウ同様に、どうしようもないお話かと思ったら、ちゃんと「使者」が来ていたのでかなりホッとしました。嘘も方言。口からでまかせ。
加えて、「終章」でのホワンロンの行動がむちゃくちゃ可愛い。
自分の為の盗みだって! 翡翠色の鳥!