三雲 岳斗
少女ノイズ
ミステリアスなヘッドフォン少女の美しく冷徹な論理。
欠落した記憶を抱えた青年と心を閉ざした孤独な少女。
彼らが出会った場所は無数の学生たちがすれ違う巨大な進学塾。
夕陽に染まるビルの屋上から二人が見つめる恐ろしくも哀しい事件の真実とは――。
気鋭の作家が送る青春ミステリーの傑作!】

“青春ミステリー”。
それはそうなのだけど、キャラびいきも出来る作品だと思う。
殺人事件――しかも猟奇的で脅威的な殺人現場の写真を撮りたがる特殊な性癖の大学生と、
優等生の仮面を剥がせる唯一の場所である塾で死んだように眠る少女。
持ちかけられたのはバイト。塾の講師。
立ち入り禁止区域でヘッドフォンをして横になっている模試トップクラスの女の子は、異常な推理力と苦しいほどの正義感で事件に関わろうとする―――。

推理そのものを過度に期待すると肩透かし。短編連作。
最後はしっかりと繋がっていますが、それもそれで結構予想できる終わり方。
うーん、三人(青年と少女と、青年にバイトを依頼した女性)のどれかに入れ込めればまた違ったのかなとも思いますが、それもなかったので。これは個人だからなぁ。
一般的で真っ直ぐな“青春”。若さ故のイタイタしさと思い込みがありました。
ミステリーと人情劇だったら、足して二で割ったくらいかな。
ただページが割けない分、早足です。

お人好しの青年はともかくとして、“両親の不仲”や“優等生の仮面”というキーワードを盛り込まれた退廃的な少女はかなり好みであるはずにも関わらず、“正義感”が鼻に付いたのではないかと。
ん、イイコでいることに疲れたにも関わらず、“誰かが傷付くのを見たくない”というのは、この本から受け取った私の中ではとても矛盾していました。
中途半端な印象を受けたのかな。
あと、依頼者がほぼ女性なのも奇妙。確率二分の一だけどね。