打海 文三
裸者と裸者 下 (3) (角川文庫 う 15-4)

おまえが罪を犯すなら わたしも罪を犯そう。
戦争を継続させているシステムを破壊するために。月田桜子と椿子。
双子の姉妹は女の子だけのマフィア、パンプキン・ガールスつくり、世界に混沌に見を投じた――。

両親の離婚後、月田姉妹は烏山のママの実家に引越し、十一年と数ヶ月、屈託なく暮らした。
父親の不在を思ってふさぎ込むようなことは一度もなかった。
そして応化九年の残酷な夏をむかえる。東から侵攻してきた武装勢力に、おじいちゃんとおばあちゃんとママを殺されたのだ。
十四歳の姉妹は、偶然出会った脱走兵の佐々木海人の案内で、命からがら常陸市へ逃げ出した。 】


上巻「孤児部隊の永久戦争」では海人が主役でしたが、彼が拉致に近い形で従軍していた場所から逃げる途中、「ママの死体を隠すのを手伝って」という姉妹が主役になっています。
海人側は若干です。ヨウロウやガウリ、弟妹が出てくるくらいで。
新たな組織は続々と。覚えられない…!!


視点は椿子と桜子。
インモラルの象徴であり、海人の対極でありながら彼を尊敬し、またあらゆる差別を一身に受けるようなマフィア、パンプキンガールズの創立者の二人。
男尊女卑、人種差別、性差別。女でありながら男を買う、女を買う、というのもこれに引っ掛かり、敵だらけの中での「戦闘」。
誠実な――なんらかの意味のあるだろうベッドシーンが数回。
海人より生々しくありませんが、例え読むのが二回目であろうとも姉妹がどこに欲情したのかよく解ってません。
買っていたり襲っていたり(唐突)。彼女達は本当に“なんでもあり”だなぁ。
窮屈や束縛を嫌うのは、折角入れてくれた学校を退学するので既に解るかな。


実質上、パンプキンガールズは幹部の一人に自身の父親を据えているモーセと対立状態。
日本人至上主義の人種差別。
だというのに、孤児院から病院、学校までを無償で提供しているので、駆け出しの彼女達は対抗するだけの力を持たない。
そこで出てくるのが孤児部隊のカイト!
イリイチ率いる外人部隊に、女性の司令官である白川。
常陸軍もまた、モーセの第二の敵となりうる要素を持っていたり。
提供するのは訓練場所と軍事知識。

この作品に悲劇的な「父」と「娘」の対立をいれるのはちょっと勿体無い。
例え表現するときに父親であることは解りやすく目を引くので抜けないにしても、これを親子の対立を見るのは、椿子と桜子に対して失礼かなー。
結果的に“父親殺し”となるにしても。
片方が死んで漸く確立される「自己」。
可笑しくなったんじゃなくて。二人が一人であった彼女の世界で、半身を失った。
彼女らに名前は意味がない。便宜上の意味すら、時に持たない。
かあっこいいねえ。


■ レビュー拝読!新・たこの感想文さま/12月6日追記