西城 由良
宝印の騎士 (ウィングス文庫)

【宝印―それは、宝珠を体内に取り込むことで浮き出し、様々な威力を発揮する模様で、選ばれし者に与えられる力の証。
誰にも頼らず生きてきたスラム出身の孤児・ノイルは、貴族の庶子であることを利用して宝印学校に通い、宝印を得ようと必死だったが、卒業試験で落第してしまう!
同じく落第した下流貴族の少年・ウィリップと共に、校長がノイルの手に封印した宝珠の名前を、日没までに調べるという追試を受けることになるが…。
明日を探す少年たちのプレシャス・ストーリー! 期待の新鋭、西城由良のデビュー文庫。 】

そこそこ良質な少年達の友情物語。
恋愛一切ナシ。女役で言えば泣き虫でなよなよしたウィリップですが、基本的には男の子達の友情かな。
「宝印」については、手の甲や額に紋様が現れ、その宝石に応じて属性と能力が使える。
同じ属性の宝石でも、格差があり、「焔」と「烈火」では、烈火の方が潜在的に上。
ただ、持ち主の技量次第では、焔の宝石が烈火に勝ることもある。

主軸の一端は、貴族の愛人の子にして14年前には奴隷扱いされていた人種のノイル。
人を信用せず、宝印さえ手に入れば他はなんでも構わないという子。
ある意味でこの子の成長物語でもあるんだけど、結構嫌味にならず創られていました。
というかアレだけ裏切りに曝されて真っ直ぐモノを見るというのが酷なお話。

そこで出てくるのが泣き虫で純粋なウィリップ。下級貴族であり、水の属性を得ます。
最後に入っている試験のお話(実は既に会っていました)では、愛情たっぷりの家族が出てきます。
この親にしてこの子あり。ノイルとはまさに対照的で、だから今後もいい影響をくれるのだろうと思っています。
もう一人は従兄弟であるティフェール。上級貴族の息子で、焔の属性を得ています。
プライドが滅法高く、ノイルとは擦れ違いざま罵詈雑言。喧嘩ごし以外では口を開かない。
作中でも、「隠す」といいながら足払いをして池にどぼん、など日常茶飯事です。

最初は卒業試験に落ち、追試を受けるお話。
「宝珠」の名を当ててみろ、とウィリップと協力しての追試です。
落ちるときは二人で。受かるならば二人で。
王様の暗殺が出てきますが、話としてはちょいちょいなんで、期待すると肩透かし。
ティフェールを引っ張り出す為かな。

その次は、ガイダンス。
弟子になることが義務化され、その出生と極貧によりなれないノイルは、頼みの綱である校長が仕事から帰ってくるまで逃げ回るハメに。
捕まれば命がない。冒頭から逃げ回ってますが、結局誰に命狙われたの? 同族?
校長のコネで事なきを得るものの、「努力」云々のお話は耳に痛かったです。
努力をしているのならば報われるべきだ。努力したのになぜ報われない。
「1番」がどうこうは抜かすにしても、これはした人ほど精神的にイタいんじゃないかなと思います。や、言うほど痛くもないんだろうけど、不意打ちで来たかな。

最後は試験のお話。平和です。
ウィリップ視点なのでほんわかしてます。
ノイルだと結構ツンケンしてました。
絵も可愛かったですし、2巻早く来ないかなー。