北森 鴻
メイン・ディッシュ (集英社文庫)

【小劇団「紅神楽」を主宰する女優・紅林ユリエの恋人で同居人のミケさんは料理の達人にして名探偵。
どんなに難しい事件でも、とびきりの料理を作りながら、見事に解決してくれる。
でも、そんなミケさん自身にも、誰にも明かせない秘密が…。
ユーモラスで、ちょっとビターなミステリ連作集。
文庫化に際して、新たに特別短編を加筆。
さらに美味しくなった、スペシャル・メニューを召し上がれ。】


後半に行けばいくほど面白くなっていきます。
ひとつひとつの短いお話(推理)の中で、段々と明らかになっていく「ミケ」さんの過去。
しかし最初の推理もフルスピードの暴走レース(な感じがした)、
加えて二話目のお話の後味が悪すぎたので、挫折しかけましたが、いや、最後までめげずに読んでよかったです。

全体的に漂う出来すぎ感、そろえました感は付いて回るのですが、
全く関係のないような大学生のお話と、料理好きなミケさん、
加えて読者を混乱させる電車内での遣り取りと入り乱れる「人」。
そして最後のアナグラム
こーれはもう、やられた!と顔を叩きたいくらい。
ニヤリともすれば思わず破願してしいますね。無邪気でしょうがない子供の悪戯。

どちらの人間であっても受け入れてくれる場所は、
ミケさんがミケさんであればいいとユリエが思ったればこそ。
主催する劇団のメンバーも捨て置かずにしっかりと引っ張ってくれるし、
一緒に築き上げてきた「絆」は舞台を変えても繋がっていてくれて、
ひとりひとり、きちんと書かれているのが嬉しかったです。
ミステリーとしての面白さよりは、俄然人間ドラマに食いつきました。
最初はウザかった小杉が最後に行けば行くほど頑張ってます!
ミケさんの視点での「ユリエ」はドキっとしました。
滝沢のときとミケさんのときではがらりと変わりますねー。