日日日
ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)

【「ちーちゃんこと歌島千草は僕の家のごくごく近所に住んでいる」
――幽霊好きの幼馴染・ちーちゃんに振り回されながらも、「僕」の平穏な日常はいつまでも続くはずだった。続くと思っていた――あの瞬間までは。
怪異事件を境に、ちーちゃんの生活は一八〇度転換し、押さえ込んでいた僕の生活の中の不穏まで堰を切って溢れ始める…。
疑いもしなかった「変わるはずがない日常」が音を立てて崩れ落ちていくさま、それをただ見続けるしかない恐怖を描いた、新感覚のジュブナイル・ホラー。
世紀末の退廃と新世紀の浮遊感を内包した新時代作家・日日日(あきら)、堂々デビュー。 】


………ん、うん。うん。
西尾さんが先に出たから文体、口調、語り口が似ているということで叩かれてもいるけど、個人的には読んでいる途中に連想するだけであって、読むときの邪魔にはならないから特に。
稀少こそが個性ではない。というかむしろどっちが優先かなんて読んだ順番で変わるし。

崩壊した家庭で鬼よりも怖ろしい両親から隠れながらベランダで過ごす「僕」。
感情を極限まで抑え、「衣食」を除いた「住」だけを確保された生活。
お母さんの第一声が誇張ナシに「くたばりなさい」ですからね! 推して知るべし。

「僕」の幼馴染は「ちーちゃん」。
幽霊に憧れ、高校ではオカルト研究会に所属。
その変人ブリから遠ざけられていること大盤振る舞いな女の子。

僕が入部した陸上部の部長、武藤白先輩と、
ちーちゃんと同じ雰囲気を持つ本好き少女。

ジュブナイル? ホラー? というかジュブナイルってなに。児童文学?
ホラーは最後の最後と、あとは「七不思議」の件かなあ。
ちーちゃん視点がないので、実際に視えるようになったときのことも語られず、霊の名前だけ借りて武藤先輩語っちゃった感じでしたが、あれはあれでよろしいのかね。
ページ数の割に登場人物が多かったので若干薄くなってましたが、
要所要所は押さえてたかな―――ってだから本好き少女とその「唯一」との所を掘り下げてくれよ……!

「大切なものを欲した」を、もう少し掘り下げればもっとドロドロ感と救われなさがあったかなと思います。
だってアレ、流してるけど、要は「ちーちゃんじゃなくても誰でも構わなかった」になると思うんだ。
大切だった? 後悔してる? ―――裏切ったくせに。
と、普通の女は言うだろうが、ちーちゃんは言わない。
だって「モンちゃん」は、ちーちゃんの世界で奇跡のように唯一あるものだから。

壊れた日常、とは言われても、綻びと解れはそこかしこにあるから、範囲の中。
むしろあれだけ揃えておいてなにも起こらない方が不思議だ。

年齢で誉めそやされもすれば、年齢で見下されもする。
とりあえず、私はただの米粒でいいや。