冲方 丁
ばいばい、アース 1 (1) (角川文庫 う 20-1)

【歌え剣、奔れ少女、ただ、世界の理由(ことわり)を知るために――
『シュヴァリエ』『マルドゥック・スクランブル』の冲方丁 幻の初期傑作 4ヶ月連続刊行でついに登場!!

いまだかつてない世界を創るため、地球〈アース〉に降りてきた男

地には花、空に聖星(アース)、人々は猫や蛙、鼠などさまざまな動物のかたちを纏う。
この世界に、ラブラック=ベルはたったひとり、異形のものとして生まれた。
牙も毛皮も鱗もない“のっぺらぼう”の彼女は、自分と同じ存在を探す旅に出る。
放浪者の資格を購うため、剣士となって〈都市〉と〈外〉との戦いに臨むベル。
そこで彼女を待っていたのは――。
異能の世界構築者冲方丁、最初期の傑作が待望の文庫化!! 】


―――この世界はここにある。だからそれを書いてるだけ。在るものを書いているだけ。
今更説明する理由も必要も感じないくらいに当然の存在。
そこで、少女と師匠と兄弟子と相手は生きてる。

ごめん待って付いていけない。
ほとんど説明されない世界観――それを説明していたらページが足りなくなること必至――を飲み込むのに時間がかかる。
それ以前に、飲み込めない部分がある。随所随所明らかに振りまく“謎”もそうだけど、そもそもがこの世界は普通の人間(ノーマル)が居ない。
種族の特性から能力まで、こっちが覚えるまで書き込むのではなく、文の中で何度も出して覚させる。
ルビが非常に多い。例えば「長耳族」に「ラビツティア」だけでなく「うさぎ」。
主人公の名前にしても、ラブラック・ベルというだけでなく、
ラブラックには珍しき者、ベルには小さき者、という意味を持たせたり、
ザ・オールに賢き者だったり、ザ・ナッシングに愚か者だったり、忙しない。
けれどまた、その解釈一つ一つが面白い。
「守り人」シリーズのようにふんだんな用語は覚えるのも大変ですが、その世界を豊かにしてくれます。

ストーリーとしては旅人(ノマド)になって自分の由縁を知りたいと師匠と喧嘩始めてます。
殺したと思ったらどうやら違ったらしいですが、“呪い”を打ち込まれて導き手を胸に<剣の国>へ。
そうして旅人になるための資格を王から得たり、兄弟子に会ったり、助けられたり、かつて自分を育ててくれた両親に会ったり。(ここはよかった。ちょっと早かったけどそれでもよかった!)

そして、兄弟子・ガフと共にトップヒエラルキーである四剣士のひとり、アドニスと会います。
出てくるの遅かったねヒーロー。
しかもちょっと因縁のある人を仕留めに行かなくてはならなくなってます。
両性具有体ではありますが、見た目には女性です。
まーベルもまだ気付いてないからいいッスけど。

しかしなにに魅かれたって、身の丈ほどもある剣を背負う少女ですよ!
ちょっと表紙の子は幼い印象ですけれど。
アドニスと通じ合うのも素敵でしたね。
是非今度は同じ場所でで戦って欲しいです。

P130の1行目って誤字だよね……?