三田 誠, 安田 均
虎は歪める―精獣戦争

凄く物語物語した物語です。目に浮かぶよう。良い意味で漫画みたいです。
主要三人も掘り下げられてきたし、仄かな恋愛もさらりと書いてくれていて、
しかも台詞じゃなくて地の文だったりするから、仄か過ぎて悶えます。
沙漠で行き倒れた行商人が施された一粒の水をありがたがるが如く。
見逃しそうになりますが見逃せません。
展開自体は結構なスピードで進んでいくんですが、安っぽいとか話に無理があるとか、人間の感情の動きがぎこちないとかは、全くありません。
物凄く自然に受け入れられるし、だけど次々と明かされる実態に驚きもする。
物語がかった口調もすんなりと入り込んで、
王道ではあるけれど陳腐ではなく、常套なのに新鮮。
まだ1巻しか読んでいないレンタルマギカよりこっちのが好きです。



―――にしても、ティカが虎を宿すとはなァ。
ザクレフの苦悩っぷりが目に浮かびます。
アズナートとの関係も「お?」と思っただけに。
そう、アズナート、ザクレフを助けたんですよ。
夕焼けの力から抜け出させてくれたティカのお礼というコトで!
ああいいなぁ。親友のために怒っていると解釈したティカ。
細い細い糸がふたりをつないで―――切れちゃうわけですが。
それでも、一度繋いだ糸を繋ぎ直すのだから、きっと上手くいくことを願います。
助けられなかった憤怒を抱くザクレフも読んでてにやけます。
淡すぎるような感情かもしれませんが、
ティカが体から花が咲くという奇病になったときも看病してましたし。

毎回新しい組織が登場してくれるのもワクワクしますね。
白魔、死兇、今回は<創樹>です。
双女王、仲はよくないようですが、戦力としては素晴らしいものなのでしょう。
片方の王・スーリアがグノーシルグ(紅虎)を捕らえてくれとアズナートに頼みに来ます。<螺旋の街>から<砂王>という詠み手を招いて、砂で絵を描かせ、瞬間移動。
リィナイラはちょと出てきますが、補佐役、かなぁ。

ウルズはちょっといいとこなしかもしれませんが、呪うと決めた精獣戦争、
仲間であろうと躊躇はしません。
ゆっくりと確実にジーヴァとの境目がなくなってきているのでとても怖いです。
虎の能力は精獣の力を歪めます。今更ですが、タイトル通りなんですね。
ああしかし是非ザクレフには頑張ってもらいたい。
今回から上下巻らしく、「続く」と終わっていますので、
続刊もなるべく早く読みたいと思います。

・ 関連作品の感想 ・

龍は喰らう――精獣戦争/著・三田誠 原案・安田均
狼は惑わす――精獣戦争/著・三田誠 原案・安田均
猫は導く――精獣戦争/著・三田誠 原案・安田均