榎木 洋子
ヴェルアンの書―シュ・ヴェルの呪い (小学館ルルル文庫 (ルえ1-1))

特になんの障害もなく終わってしまった気がします。
展開が主人公に甘いなぁと。

重病で床に臥すのは壮健だった父・ヒロチカ。
かつてこの地に居る盗賊を追い払い、村娘のミワコと結婚をした白虎軍所属の侍。
ヒロインは彼の唯一の娘であり“記憶の腕輪”を継承したサツキ。
セルキスという少年が村を訪れ、それを契機に父は亡くなり、
サツキは自身が嵌めている腕輪の本来の意味を知り、それを譲るために侍の試験を受けに行く。

和洋折衷ごちゃ混ぜファンタジー。
ごちゃ混ぜ過ぎてて読んでて「どこの世界のどこの国だよ」と思います。

死と法律をつかさどるカヌー・シュ神
生と豊穣と結婚をつかさどるイラ・パシス神
狩りと戦いをつかさどるアズ・フース神


それに、王都では朱雀、青龍、玄武、白虎と配属される団体名がついてるし、サツキの名字なんて藤桐です。
セルキスはセルキスで“ヴェルアン”という呪いを受けた一族。
30年という短命ですが、その魂には四代前までの記憶が蓄積され、遡ることが可能だという。

黒薔薇姫でも思ったんですが、どうも世界の設定がぼんやりしすぎている気がする。
表紙からすれば精々インドとかチベットとかそんな感じがするのに、
侍とか<四神>とか明らかに中国や日本だろ。いやアジアだけど。括れば確かにアジアだけど。

それに、ヒロチカの話をするからって腕輪が反応する意味も、
侍でなければ腕輪を譲れない意味も、正直よく解ってません。
結局、結構汚い試験を受けてなるわけなんですが、
“称号”って後付で意味ないんじゃないの?と思ってしまう。

登場人物も出すだけ出して次回。ってのが多い気がする。
最後の最後であんなの出さなくてもいいじゃん、
そこは欲張らずに終わらせて。

セルキスもサツキもそんな嫌いじゃないのになぁ。
妙に読むのに時間が掛かりました。
そして母が強い。なんだこの強さ。

最後、2人で旅に出るんですが―――さて、続刊はどうしよう。