倉吹 ともえ
沙漠の国の物語―楽園の種子 (小学館ルルル文庫)


沙漠を癒す大樹はただひとつ、カヴルの地にある、一本だけ。
人の心に呼応し、人の心が乱れれば木も乱れ、荒めば荒む。
枯れるも潤すも人の心次第。
種を植え、芽を出し、育って大樹となれば、水が湧く。
種を運ぶ“使者”に選ばれたのは未成年の幼い少女。
前例のない事態に、だけど樹が選んだのなら、と送り出す樹の管理を務める園長さま。

話は、その少女がたったひとりの身内に出立を止められている所から。
種を奪おうとする“砂嵐旅団”に、
同じ年頃の癖して一流の刀の腕を持つ少年・ジゼット。
火、水、土といった自然に在る“ジン”。
操れる者は極僅か、生気を差し出せば実質自然を多少なりとも操れることになれる。

ジゼットは見れるだけ、ラビサは操れるだけ。


「力を半分こしたみたい」というラビサの能天気さに呆れるジゼットですが、
揺らがずに最後までラビサは真っ直ぐだったので気持ちよかったです。
コメディの部分は笑えるというよりも微笑ましく、
入れた部分によってジゼットのキャラに一貫性がなかった気がしないでもないですが、読んでいるときは気にならなかったです。
読み終わって、冷静になって、振り返って、「あれ?」と思うくらい。


聖地と言われるカヴルの罪、
種が年々減っていく理由、
“砂嵐旅団”の存在意義。


――――俺の故郷に来て欲しい。


そうして、ジゼットが案内した“故郷”とは―――?



砂嵐旅団の頭領・カヤル(ドラマCDでは保志さん)が、
意外と簡単に出し抜かれちゃったりしてるんで「えー」と思いましたが、
嵐が解かれた町を目の前に取り乱すとき、この人が出された理由が解りました。
愛していたものは同じなのに、
憎しみを募らせたカヤルと、その連鎖を断ち切った上で解放することを望んだジゼット。
仲間を殺した罪は、それ以上の仲間の笑顔でも癒されず、背負うかと思います。
ジンはともかく、シャイターンや願いを叶える代償や、書き込み不足な所も。
逆に、本来の目的からも逸脱してませんでした。



しかし、途中立ち寄った街で説教をするジゼットがやけに面白かった。
先生口調でラビサに注意するんですが。
うわーもーかーわーいーいーーーーーーーーー!!と枕をバンバン。


樹を管理する者を園丁といい、ラビサの兄がこれなのですが、
途中、かつて種を任せられた園丁と立ち寄った街で出会います。
盗まれた種と、盗んだ使者。
そうして、段々とラビサは断片的にカヴルの罪を知って行きます。


ジゼットの街の人達がめちゃくちゃいい人ですね。
悪意なんてこれっぽっちもない。子供達が譲り合うシーンは都合が良いと言われようと甘ちゃんと言われようと素敵なもんは素敵です(なんて横暴な
この種に、これ以上相応しい街はない、と差し出した奇跡の種に怯えず、
むしろ喝采をして喜ぶ彼らを読んでいたら何故か涙が……。
ここで泣く奴は火狩だけだと思います(笑) 本当に、普通の、予想できる文章運びだったのに。



「ジゼットに会えなくなるのもやだ!」


堂々と高らかに、宣言をするように恥じることなく言い切ったラビサは、
大切なものが多くて迷うこともあるだろうけど、考えて答えを出す人だと思います。
無知に甘えず、幸せに浸らず、優しさを疑わず、弱さに怯えず。
「臆病者だ」と自ら言うジゼットだからこそ、道は開かれたんじゃないでしょーか。
ローワンと魔法の地図を思い出しました。エミリー・ロッダさん?



私的には是非続編を……と。
植えた種を管理する人達がジゼットの故郷について、晴れ晴れしく終わり。
なんですが、来た人達も込みでジゼットとラビサのお話が読みたいよー。
拳を突き上げて「おー!」みたいなふたりがめっちゃ可愛いんですが!
さり気にオンナ慣れしてるジゼットも可愛いんですが!(エ
そして19歳だったジゼット! ごめんラビサ16歳だ!
同年齢だと思ってたよ!


ひとりでは不完全なジゼットとラビサが背中を合わせて戦ってる所とか是非みたい。
結構最初の方で「刀を教えてくれ」というラビサを断るジゼットですが、
少年結構人を殺してしかも悩んでるので、
それを背負わせたくなかったからかなァとも思いました。
ま、甘ちゃんの痩せ少年に教えるの?ってのも否めないとは思いますが。
男装をしているので途中まで誤解してます(笑)
しっかし、そこ触っておいて「微妙」ってあーた(笑)


あ、ちなみに実質ドラマCDは210円くらいなので、
保志さんとか浪川さんが好きであれば損はないと思います。
フリートーク(ってほど長くはない自己紹介程度なんですが)、
ぱっぴー言ってる時点で「買ってよかった」と思う火狩はどうやら保志さんの「ぱっぴー」が結構スキらしい。
小説の一部を切り取って音声化。
ジゼットとラビサが旅に出る当たりからでした。


そしてどーでもいいっちゃどーでもいいんですが、
個人的にこのイラストレーターさんカラーもモノクロも結構好きでしたので、
サイトの方を探してきました(笑)
名前で検索かければすぐでした。


それではそれでは★
あーすっきりしたぁ。