岩井 恭平
ムシウタ〈01〉夢みる蛍

話題になっているので読んで見ました。バックの男の子はともかく、前の女の子がいかにもないかにもさ加減(どんなだ)なので、遠慮してた本です。



宿主の夢を食うことで嫌がらせのように宿主に特殊な能力を与える“虫”。
その虫に憑かれた“虫憑き”―――少年少女のお話。
ランク&種類わけされる中、
火種――戦闘系一号、虫憑きの中で“最強”とされる“かっこう”。
異種一号の“ふゆほたる”を4年前“欠落者”とし、感情も夢も行動も起こさない、
ただ命令を待つだけの身―――命令されなければ食べもしない者とした。


少女と少年が願ったのは「自分の居場所」。



あとは粗筋通り。です。
特に外れることもなく、読み終わってから読んでも、違和感はありませんでした。


ただ冒頭の、大助が詩歌(表紙の女の子)に魅かれる、というのがあんまりにも強引です。
一目惚れ、別にいいですけれど。こんなのってないでしょう。
人間が生きてるわけですから、人間が動いているわけですから、
もうちょいちゃんと書いて欲しかったです。


出てくる人出てくる人が全員(土師さん除き)ほとんどが虫憑きとか言うのも強引かなと思います。
一般人は居ないのかよ、一般人は。
利奈(表紙の女の子ではないです)もあからさまなツンデレだったし、最初っから失恋決定。

だけどなんでか、“欠落者”の隔離施設に行く、と決めたとき、
仲間の誰もが揺らがずに利奈と共に行ったのには泣けました。
見てもらえず、愛されもせず、大切な人からも思われてなかったけれど。
彼女の自己犠牲が、私は凄く好きでした。
誰かを恨まないとやっていけなかったんだよ。
“かっこう”や“ふゆほたる”ほど、強くはなかったし、なれもしなかったけど。


だけど、利奈には2人に絶対居ない、仲間が居たよ。


命を賭けて、居場所を創りたいと思うほどの、仲間が居たよ。

…………死亡、決定だけど。
でも! ふゆほたるだって(アポストロフィめんどいので省略)欠落者だった!
それなのに戻ってこれたんだから利奈だってきっと戻って来るよ!
――――ご都合主義は否めないけどさ。


最初、正義であるはずのかっこう側があんまりにも悪人で。
しかも、土師さんの毒の強さにちょっとムカついてました。
なに、あの人。
株を上げようとしてるのも解るし、好きな人も多いと思うんだけど。
恋情って、1番利用しやすくて利用しちゃいけないものでしょ。
利奈の肩持つし、むしばねのチームのが好きだから!


大助は好きでもない女の人に甘い言葉を吐くし、
一見脆そうで居て実は強く、誰にでも愛されている詩歌ちゃんがヒロイン。


ハッピーエンドじゃないです。
誰もきっと、幸せになんてなってない。
利奈の最期は、幸せだったのかもしれないけど。
生きていれば、あれ以上の幸せ、あったよ。


対抗勢力としてハルキヨ、虫を創った者と疑われる「始まりの3匹」。
続編を前提なだけに、釈然としない終わりでした。
誰も、報われない。
これをずっと読んでいけば、最後は幸せになってくれるのかな……。


デジャヴ(デジャヴュ?)が否めない所もありましたが、許容範囲内だと思います。
世界観も設定も好きですが、如何してもあの最後の締めくくり方は………。
“かっこう”も“ふゆほたる”も大助も詩歌も――――頑張って、としか言えないけど。


それでは失礼します。