恒川 光太郎
夜市
これも表紙がステキですね。金魚と後ろの黒……木?
ホラーってほとんど読まないんですが、ちょっと試してみました。
夜市のことで短編連作かなあ、と思ってたら、夜市のあとのお話は全然夜市と関係なかったです。
妖も化け物もどれでも内包する夜市に紛れ込んだものは、
なにかを買わないとそこから出られない。
小さい頃、弟と「野球の器」を引き換えた青年のお話でした。
いや、これは意表をつかれました。
幻を切りたい、という男の正体が最後の最後まで解りませんでしたもの。
お兄さんの最後も、「え!?」って感じ。
ああ、そうかそれだけが心残りだったのね……。
うーん。報われていますが、ハッピーなんですが、切ないです。
それでも頑張って生きてください、弟さん。
ときたま女のコがイラッときましたが―――まあそこは好みですので、大丈夫だと思います。
そのあと収録されているお話のほうがページ的には長いのかなぁ。
これもホラー。でもファンタジー混じってますから。
話がえぐいってだけで。
友達と迷い込んでしまったのは妖の道。
幾つにも別れ、どこにでも通じている(?)本来なら人が不用意に入ってはいけない道。
主人公がぼやけちゃった感はありますが、
なんだかふわふわしてるのにどっしり重かったです。
蟲師っぽいなあとか思ってましたが(蟲師というよりギンコさん)、
主人公の男の子が、友達を生き返らせるために頑張るのは、
報われないって解ってても、嬉しかったです。
異世界は異世界のままがいい。
非日常は非日常のままでいい。
そこにずっと浸っていれば、それは異世界でもなくなり、日常と成る。
のかな、と思います。
望めば、そこの世界で生きれたのに、それでも選ばなかった。
レンが―――可哀想だけど、可愛くて。
無い物強請りなのに、そんなことを思わせる素振りもなくて。
母親との軋轢も出生の秘密も、特殊で複雑ではあったけれど。
それでも、きっと彼は死ぬまであそこにいるのでしょう。
そうして、道を記していくのでしょう。
ホラーって感じがしませんでしたが、世間一般的にはこれがホラーなんでしょうか。
レンさんの出生と弟を売った青年の末路を予想できた人は凄い。