頭にチャイムの音が響く。午後の授業の終わりを示すそのチャイムは、帝の心を揺らした。
「おい、帝、いっしょに帰ろう。」
晴香の言葉は耳に入らない。
―――早く夜風に会いに行きたい。
その一心で、ホームルームの終わりを願った。ふと気付くと、背中に重みを感じた。
「うー、帝が無視するー…。」
晴香がいじけているだけだった。
「ごめんな、今日は夜風のお見舞いに行くんだ。晴香はいかないだろ?」
「帝が行くなら行くもん…。」
無視するとなぜか女らしくなる晴香が頭を帝の机にぐったりとおく。帝はポンポンと晴香の頭を叩き、席を立った。放課後、速い足取りで病院に向かった。学校とは家を挟んで反対側だが、そう離れているわけではないので苦にはならない。今は、夜風に会いたい一心だった。
「帝は夜風のこと好きなの?」
「どういう意味だおい…。」
「いや、ゲイなのかなーって。」
「ふざけんな。俺はクラスの男子みたいな変態じゃねーよ。変人だけどな。」
「あはは、知ってる♪」
無邪気に笑う晴香の髪が風で揺れた。
病院に着いた二人は、受付に一礼し、病室へ向かった。家が裕福なのか、いつも夜風は個室で寝ている。今日は本を読んでいた。
「よ。見舞いに来たぞ。」
「あぁ、帝か。ありがとう。それと、晴香ちゃんだったかな?久しぶり。」
やわらかくやさしい口調で夜風が言う。晴香は基本男口調なので、夜風のような男子が苦手なのか、帝の後ろに隠れている。
「で、体調はどうなんだ?」
「命に別条はないよ。」
「そんなもん最初っから知ってるよ、まったく。」
二人は苦笑した。
日常という名のノートに、また一行、歴史が刻まれた