半年前に落ちた猫が跳ねる、それって生きてませんから。 | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

半年前に落ちた猫が跳ねる、それって生きてませんから。

リーマンが破綻してから、半年が経った。
正直、2年ぐらい前の出来事のような気がする。

そして、色んな意味で感覚が麻痺してきてしまっていて。
何が起こっても、大して驚かなくなってきている自分に気づく。

かつてあるトレーダーが「女王陛下の銀行」と言われたベアリングスを不正取引で破綻に追いやったときの損失額が1500億円程度。
大和銀行NYでの米国債不正取引で、大和銀行がアメリカからの撤退を余儀なくされた時の損失額が1000億円程度。

喩えが悪いのをあえて承知の上で言うと。
今起こっていることと比較すると、かつての「大事」は、子供の火遊びのようなもの。

半年という短い間にあまりに多くの出来事が起きて。
そして、半年という短い間に世の中の景色が一変してしまった。

ダーウィンは、「最も強いものが生き残るのではなく、変化に最も柔軟に対応できるものが生き残る」と言ったが。
自分が変化に柔軟に対応しているかどうかは分からないが。
少なくとも変化を受け入れているからこそ、この事態が2年ぐらい続いているような気がするのかも知れない。

先週BofAのCEOが、足下の業績は好転し、今年は通期で黒字になるだろう、との発言をしていたが。
昨年の夏に、世の中が今のように変わってしまうことなど想像もつかなかったことを考えると。
自分が9ヶ月後のことを正しく見通せると思っているというのは、恐ろしい思い上がりに思える。
そんなにはっきり将来を見通せるのだったら。
メリルを買ったのは戦術的失敗だった、なんてことを同じ人が言うわけはなく。
この発言を聞いて、逆にとても不安な気分にさせられたのだが。

よく読むと、流石のKen Lewisもそこまで思い上がっていないことが分かる。
というか、この発言を聞いて、今後の相場や景気の先行きについて強気になるのがいかに馬鹿げているか、分かるだろう。

だって、「景気よくなればアメリカの銀行は黒字になりますよね」って言っているだけだから。
それって、常に正しい。

2月まではどこの金融機関も、いわゆるマーケット業務の収益が極めて高かったのは事実。
だけど、多額の資産を抱えている商業銀行のポートフォリオは。
今後ファンダメンタルズの悪化、特に商業用不動産市場と失業率の悪化によるクレジットコスト増大によって大きな打撃を受ける。

市場のボラティリティの増大と金融機関の過大なレバレッジ(過小資本)から、システミックリスクが高まった金融危機の第一フェーズ(金融危機2.0)から。
与信ポートフォリオの劣化による資本の毀損と、その結果としての信用創造機能の機能不全、そこから生まれるデフレスパイラルという金融危機の第二フェーズ(金融危機1.0というか、クラシックなやつ)への端境期だから。
今、一瞬良く見えるだけ。

バンカメCEOの発言の肝は。
「『貸倒損失と評価損を加味しなければ』今年は黒字になるだろう」、という、二重カギカッコの中の部分。

それはとりもなおさず、「『ローンが焦げ付かなければ=アメリカのファンダメンタルズが改善すれば』『保有有価証券の値段がこれ以上下がらなければ』アメリカの銀行は黒字転換するだろう」、ということで。
景気が良くなれば、儲かりますよね、と言っているのと何ら変わらない。

今日、たまたま世界のメジャーな金融機関の総資産を調べていたのだが。
昨年末の時点で、英系2行とドイツ系の総資産は、米銀最大手の資産の1.4-1.6倍。
しかし反対に、欧州の銀行の時価総額は、現時点でそれぞれ米銀最大手の8分の1から12分の1程度。
欧州は、まだまだレバレッジの高い状態で。
Ver2.0というか第一フェーズがまだ終わっていないかも。

しばらくはマーケットのテクニカルでショートカバーが入って。
Dead Cat Bounceするかも知れないが。
(Dead Cat Bounceって、「死んだ猫でも、高いところから落ちれば跳ねて生きているように見える」ということから、「相場が急落すればどこかでショートカバーが入って相場が復活したかのように見える」、という意味のガラの悪い業界用語)

単なる端境期ですから。CMBXを見よ。

また暗い話書いちゃった…。