夜明けはまだ遠く その2 | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

夜明けはまだ遠く その2

Ambacへの金融機関からの奉加帳方式による出資が議論されているが。

メンバー見てみると。

みんな、人に資本出す余裕あるの?って感じの面々で。

本当に、出資できるのかな。


仮に出資できたとしても。

出資比率は、それぞれのメンバーが持っている、In the moneyのポジションに応じた割合になるはずだが。

誰が、それを公平に算出するのだろう。


モノラインを救わなければ新たな金融危機が襲う、ということには総論賛成なのだが。

各論で、結構苦労が多そうで。


個人的に、あんまり楽観はしていない。


また、FEDが利下げしたので、これ以上の事態の悪化はない、と考える人もいるようだが。

FEDが直接介入できるのは、金利と流動性だけで。

現時点では、彼らはクレジットマーケットに直接介入できる術を持たない。


「失われた10年」の間に日銀が採った政策は。

貸出先を失った銀行に、ゼロ金利で資金供給し。

その資金を元に、銀行が日本国債を購入することで。

キャリー収益を得させて。

麻痺してしまった金融仲介機能を、時間を掛けて回復させる、という政策だった。

(預金者・納税者から、金融機関への富の移転を起こして救済した、という言い方もあるが)

極めて、間接的な、クレジット市場への介入。


そして、それだけでは間に合わず。

最終的には、中央銀行による、市中銀行が保有する株式の買い取り、というウルトラC政策を発動させ。

直接的な、クレジット市場への介入を行わざるを得ないところまで、追い込まれた。

そういやABCP買い切りオペも、やってましたね。


日本は、間接金融主体の国だから。

銀行が不良債権を抱えたり、保有株式の時価が下落すれば。

大規模な信用収縮が起こり、経済が悪化。


逆に言うと、銀行が収益を得られるようになれば。

資本剰余金が増え、信用創造拡大に転じることができる。


だから、ゼロ金利政策が採用され。

日銀による、クレジット市場への直接介入が、是認されたのだ。


しかし。

同様の手法は、アメリカでは効果が限定的なのだ。

日銀の90年代の手法と同様に。

FEDがいくら頑張って政策金利を下げたところで。


なぜならば。


アメリカの民間部門の負債の55%以上は。

直接金融市場で、調達されていて。

銀行中心の、間接金融市場が発達している日本と大きく異なる。


したがって。

信用創造は、銀行以外の主体によって行われていて。

証券会社の役割が、日本に比べてより重要に。


例えば。

企業が社債を発行して、証券会社がそれを引き受けて市場で販売したり。

オリジネートされたローンを、証券会社が自分のポートフォリオ上でウェアハウジングして、最終的に証券化して市場で販売したり。

教科書で言うところの、直接金融。


この直接金融の担い手である、証券会社の資本が毀損してしまっていて。

リスクテイク能力が低下しているから。

米国での信用創造機能が、毀損しているのだ。


低金利政策で、資金コストが低下し、銀行はキャリー収入が増加して、体力が回復するかもしれないが。

証券会社は、銀行と違ってインカムゲインをもたらす、債券ポートフォリオなど大して持っていない。

低金利政策で、もちろんファンディングは楽になるかもしれないが。


要するに。

証券会社が体力を回復するようになるまでは。

米国の信用創造機能は毀損したままで。

過剰流動性の、急激な収縮は、不可避。

FEDがいくら金利を下げたところで、証券会社の体力が回復するかというと。

効果は限定的。


日本でも、ゼロ金利でも資金は銀行に滞留して、信用創造は止まっていたでしょ?

あれと似たようなもので。


ここ数年、証券会社が儲けてきた商売は。

ほとんど、今回の騒動で、儲からない商売になった。

ABS、CMBS、CLO、シンセティックCDO、LBO、PE投資、などなどなど。


どうやったら証券会社が体力を取り戻すのか(=再び儲け始めるのか)。

何をすればいいのか。

どんな商売をして、金儲けすればいいのか。


現時点では誰も答えを持っていない。

(っていうか、こっそり私だけに答え教えて!)

一人勝ちだったGSも。

今後の収益については悲観的な見方をしていて。


米国資本主義を支える、直接金融を通じた信用創造機能は。

機能不全を抱えたままで。

いつ回復するのか、予想がつかず。


私は引き続きベアで、悲観的です。