官製不況
今日はちょっと長いし、シリアスなので、「お気楽」ブログが読みたい方にはつまらないと思います。
先に言っときます。
官製不況、という声を聞くことが多くなった。
すなわち。
マクロでは決して財政・金融政策を緊縮方向にしようという意志は見られないものの。
個々のミクロの政策の失敗の積み重ねが、経済を収縮させている、ということ。
これは、極めて、たちが悪い。
ミクロ的には個々の政策の趣旨は意味があるものなのだが。
タイミングを考えずに、「素晴らしい」政策が一時期に同時に執行されると。
あるいは、実務が分かっていない官僚が、バランス感のないまま恣意的に行政指導を行うと。
マクロ的に見たネガティブインパクトが、極めて大きなものになる。
マクロ的な意志に基づく政策決定であれば。
一応、Authorizeされた権威、例えば国民の代表たる立法府であったり、(建前としては)政治から独立した中央銀行が、(建前としては)あらゆるオプションを検討した上で、意思決定を行うのだが。
(関係ないけど、意思と意志の使い分け、結構難しいな)
ミクロの政策の失敗の積み重ねの場合は。
個々の政策の趣旨については、誰も異存はない(場合が多い)。
社会的観点から、個々の政策の個々の趣旨はそれなりに意味があり、政治家やその支持層にアピールするため。
「そうだ、その通りだ!どんどんやれやれ!」となりがちで。
少しずつ、ゆっくりとブレーキを踏むのであれば、経済は多少減速しても惰性で動き続けるかもしれないが。
誰もタイミングについて思慮することなく、すべての力を一時にブレーキペダルにぶつければ。
経済は、完全に失速。
それも、坂道を下っているときならまだしも。
坂道を登っているとき(=外部環境が悪化しているとき)に、強いブレーキ踏めば。
失速するのは、自明。
建築基準法改正による、住宅着工の急減。
と同時に、金融庁による、不動産担保ノンリコースローン、証券化商品(REIT/CMBS)に対する、理不尽なまでのモニタリング強化要請による、ファイナンス面の締め付け。
金融商品取引法施行による、リスクマネーの市場への流入の阻害。
「耐震偽装を二度と起こさない」とか。
「不動産バブルを未然に防げ」とか。
「リスクをローンオリジネータから第三者に移転する証券化商品は、ダンボール饅頭だ(古いね)」とか。
「個人投資家を、悪徳業者から守れ」とか。
どれをとっても、「素晴らしい」政策なのだが。
0か1しかなくて、その中間がないような、デジタルな判断しか出来ない木っ端役人と。
有権者に迎合することしか考えない、衆愚政治家がタッグを組んで。
机上の理想論にのみ依って、実務を知らずに政策立案・実行すると。
何が起こるかというと。
例えば、今の不動産市場。
建築基準法改正によって、建築確認が取れるのが極端に遅れ。
不動産業者・開発業者が、物件を開発して販売するまでの時間が長くなり。
資金繰りが悪化。
仕方がないので金融機関につなぎ融資求めて行ったら。
金融庁がうるさいこと言うので、金融機関がなかなか金を貸さず。
仕方がないので、銀行借り入れをあきらめて、ノンバンクなどへ。
当然金利は高く、原油高からくる原材料高の中、業者の採算は悪化。
場合によっては、破綻の道へ。
すなわち。
今、実際に起こっていることは。
バブル崩壊のきっかけとなった、不動産貸し出しの総量規制に近いんだな、これが。
この政策が、誰かのイニシアティブに則って採られているかというと。
おそらく、そうではなく。
誰の明確な意思も存在しないままに。
有権者・納税者に対して何の責任も負わない木っ端役人が。
官僚の動きをバランスよく調整することのできない、リーダーシップのない政治が。
日本の経済を、かつて来た暗い闇の淵に、突き落としつつあり。
原油高、流動性危機の中、日本経済は着実に不況への道へ。