サルでも分かる円キャリートレードの仕組み | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

サルでも分かる円キャリートレードの仕組み

RSSでモニターしている、あるブログで。

素人でも分かる、円キャリートレードの説明 、という内容の記事があり。

新聞記者が、丁寧に説明していたけれど。

それでもちょっと、難しく。


ドンジャラしか知らない子供に、3翻70符の点数計算させるみたいなもので。

たとえ話で余計意味分からないか。


超簡単に、円キャリートレードの説明を。


あなたが例えばフランス人で。
5万ユーロで、車を買うとする。
今、1ユーロ160円とすると、800万円相当の車。


1年間の自動車ローンを検討。
ユーロの1年金利を4%とすると。
来年の今頃に、5万2千ユーロを返済。


ここで。
ちょっと山っ気のあるフランス人が、目をつけた。
日本円で金借りれば、1年金利1%じゃん。
利払い、4分の1でよくなくね?


まあ、おっしゃるとおり。

800万円(5万ユーロ相当)を、1%金利で1年間銀行から借りて。
800万円を借りた途端に、ユーロに換えて、5万ユーロゲット。
車の購入代金に。


支払い金利は、8万円(800万円×1%)。500ユーロ相当。
ユーロで借りたら2千ユーロ払わなきゃいけないから、4分の1。
で、元本分800万円を1年後に銀行に返す。


おしまい。凄いお得。


あれ、何でこんな簡単に得できるの?
何かおかしくない?


このからくりが今すぐ分からない人は、金融商品への投資はやめた方がいい。


このからくりとは。
言うまでもなく、為替相場の変動。

当然、今為替相場が160円/ユーロだったとしても、次の瞬間160円とは限らないし。
1年後に160円である保証はどこにもないから。


市場では裁定が働くので。
前者のケースと、後者のケースで損得ないように、なっている。


例えば、今の例だと。


現時点で、800万円と、5万ユーロは、同価値。1ユーロ160円だから、当たり前。
じゃあ、一年後、800万円と5万ユーロは、同価値かというと。
答えは、No。


じゃあ、1年後のユーロ円為替は、いくらであるべきか、と言うと。
(上のケースと同様、1年円金利は1%、1年ユーロ金利は4%を想定)


今の800万円は、1年後の808万円と、同価値。
今の5万ユーロは、1年後の5万2千ユーロと、同価値。


だから。
1年後の1ユーロは、何円と同価値かと言うと。
808万円÷5万2千ユーロ=155円38銭。

1年後のユーロ円為替理論価格は、1ユーロ155円38銭。


スポット為替との4円62銭の違いは何から来るかと言うと。
当然ながら、ユーロと円の、金利差。

ざっくり言って、160円×3%の金利差分、理論価格は円高に振れるというわけだ。


だけど、実際には、1年後の為替が理論価格どおりに動くわけではない。

先ほどの自動車ローン借りる例でいくと。

1年後のユーロ円為替が、155円38銭よりも、円安ユーロ高だったら。
例えば1年後、1ユーロ200円だとすると。

800万円借りたフランス人は。
1年後に808万円、返さなきゃいけないので。
市場で4万400ユーロ売って、808万円を手にして。
それで、自動車ローンを返済。おしまい。


最初5万ユーロ相当の借金して。
1年後に、4万400ユーロで、返済。
超、大もうけ。

これが、狭義の円キャリートレード。

前述の条件で、1年後に155円38銭より円安だったら、儲かります。


でも、逆に円高に行ってしまうと。
反対に大損する。
さっきの自動車ローンの例で言うと。
1年後、1ユーロ125円だとすると。
6万4640ユーロ払わなければならないので。
実質金利、年29.3%払わされる羽目に。


別に、車買わなくても。
ユーロの株に投資するのに、ユーロで借金する代わりに。
将来の円安を予想して、ユーロ建ての株を、円で借金して買っても良く。


そういう訳で。

円で借金して、高金利通貨建ての資産を買っていた連中は。
高金利通貨建ての資産を手仕舞うと、円を買い戻す。
あるいは、今後円高方向に振れると予想すると、高金利通貨建て資産のポジションを、手仕舞う。


だから、海外資産市場が下落すると、円高が進む。

あるいは、円高が進むと、海外資産市場が、下落する。

(普通の国は、日本より金利高いので)

みんなが海外の資産価格の上昇と、円安を予想したから。

円借金して、円を売って外貨を買い。

さらに、円安方向に。

海外資産価格も上昇し、円安も続き、さらに儲かって。

さらに、円ショートして海外市場へ投資、という循環が続いたが。

海外市場が急落すると、みんな一斉に同様のポジションを、手仕舞い。

円高、海外資産安、という逆回転が始まる。


まさに、今起きている、あるいは今後起きつつあること。


そもそもだが、何でこんなことになっているのかと言うと。


円金利が低い、ということは。

日本経済が弱い、ということであり。

経済の弱い国の通貨は、売られるか(=円安)、買われるか(=円高)、どっちだと思う?と聞かれると。

普通の人は、「売られる(=円安方向に)」って考えますわなあ。

でも。

理論価格形成上は。

相対的に金利が低い国の通貨は、将来的に買われなければならず(=円高)。

さっき、説明したよね。

直感的に人が考えることと、理論から導き出される結論が違うことが、円キャリートレードが成立する一因となっているわけだ。

っていうのが、サルでも分かる、円キャリートレードが海外株式相場・円相場に与える影響の、解説。

以下、おまけ。

ちなみに。
円キャリートレードを、国家規模でやっていたところが。
欧州の某国だが。

ユーロ統一通貨が始まる前に。
マーストリヒト条約で、財政赤字が多すぎるとユーロ通貨に入れてあげない、といわれていて。
当時円金利はユーロ金利より、大幅に低く。円安傾向でもあったので。

このままでは財政赤字が多く、統一通貨に入れてもらえないので。

借金を減らすため、大博打に打って出た。


なんと欧州某国は、為替ヘッジ無しで、10年のユーロ円債を発行して、借金。
98年ぐらいだったかなあ。そろそろ償還だ。大儲けしてる、はず。

さっきのフランス人が、円安を予想して円で借金してユーロ建てで車を買ったのと、全く一緒。

まあヘッジファンドみたいな目鼻の効く人たちが、同じことをやらないわけはなく。

円の低金利が、必要以上に海外で信用創造を起こし続けてきていたのが、過剰流動性を生んだのだが。

さらに。

人民元が対ドルで不自然に安いので。

アメリカから見た、中国の商品が凄く割安に見えるので、対中貿易赤字が増加し。

結果、中国に大量のドルが溜まり。

中国国内で投資されるが、それでも間に合わないので。

その中国の所有するドルが、海外資本市場で再投資され。

原油や金などの、一次産品の価格が上昇していて。

中東や、BRICSなどの国に、大量のカネが先進国から流れ込み。

(一次産品はドル建てで取引されることに留意)

それらの国では、中国同様、内需に限度があるので。

そのカネは、海外資本市場で、再投資される。

これらの3つの要因から、過剰流動性が発生して。

いろんな問題を、引き起こしている、というわけだ。

アメリカの投資適格企業は。

バランスシートの健全化を、このところずっと進めて。

レバレッジ比率も、直近こそ上昇し始めたが、トレンドとしては下落してきた。

投資適格企業が借金しなくなったので。

ドルの過剰流動性が向かったところは、これまで金を貸していなかった、個人と企業への、貸し出し。

っていうと、何のことを言っているのでしょうか?

そうです。

サブプライムローンと、レバレッジドバイアウト(LBO)のことでした。

ちゃんちゃん。