常識を、疑え | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

常識を、疑え

証券化商品は、中身が分からず複雑すぎて危険、などとメディアは喧伝しているが。
ちょっと、疑問が。


証券化、って何?と言う人に、超簡単なご説明。


牛乳1リットル、200円で買ってきて。

ダイエット中だから低脂肪乳飲みたい、という人と。
ちょっと栄養取りたいから、濃厚なバターがほしい、という人を連れてきて。


牛乳1リットルから、低脂肪乳900mlとバター100gができるとして。
前者は、「低脂肪乳900mlを160円で買うよ」といい。
後者は、「バター100gを100円で買うよ」といったとすると。


200円の牛乳が、合計260円分の低脂肪乳とバターに変身。


この場合の乳脂肪分は、リスクの喩え。


200円で買ってきて、加工すると260円になるんだったら、それは金融機関も一生懸命になるわ。

でもみんなハッピー。


だって、牛乳欲しい人はいないのだけれど。
牛乳飲みたくないけど低脂肪乳だと欲しい人と。
牛乳だと物足りないけど、バターだったら欲しい人との。
両者のニーズが満たされるわけだから。


さらに酪農農家も大喜び。牛乳を加工する人も大喜び。

というのが、証券化。


ダメですか?


では。たとえば。
一番身近な金融商品である銀行預金と、証券化商品(債券部分)とを比較してみよう。
(簡単化のため、銀行の預金保険の存在をとりあえず忘れて)


よく聞く論調その1. 「証券化商品は、顧客の理解度を超えたブラックボックス」


銀行に、預金しました。
遠くの銀行行くのがめんどくさくて、近くのM銀行へ。
そういやメガバンクって、全部Mだな。


さて。そのお金は、どこに行って何に使われるのでしょう?
知ってます?普通の人は、知らないよね。


「証券化商品は、顧客の理解度を超えたブラックボックス」。
じゃあ、銀行預金者は、自分の預金が何に使われているのか正確に理解しているのだろうか。


ウルトラざっくりいうと。
銀行の資産の、大体35%ぐらいは、どこの馬の骨か(失礼!)分からない、聞いたこともない中小企業や個人への貸し出しに使われ。
15%は、名前聞いたことのあるような、大企業向け貸し出し。
10%は、国債購入に使われ。
10%は、その他の有価証券。
残り30%は、その他いろいろ。


個人・中小企業向け貸出って言うと。
信用力からいくと。サブプライムと雲泥の差といえるか?
ほんの5年前まで、主要行の不良債権比率は8%台。
www.fsa.go.jp/access/17/200506/01.pdf

ちなみに、最悪と言われる2006年に貸出が行われた、サブプライムローンの損失率は、現時点で0.7%ぐらい、ですから。


ついでに。
じゃあ、経営者の名前って、知ってます?
頭取の名前って知ってる?
普通、知らないよね。
経営下手だったら、会社傾くかもしれないのに。
経営者が誰だかも、預金者は良く知らない。


要するに、みんな自分の金がどこに行くのか分からないままに、預金していて。
証券化商品は、少なくとも月1回は、何に投資しているかのレポートが出るよ。



よく聞く論調その2. 「証券化は、長期の資産を購入していたのに、短期での資金調達しかしない自転車操業」、という批判


すべての証券化商品が、長短ミスマッチしているわけでもないことに注意。

また、銀行の負債である普通預金は、いつでも引き出せる超短期性の資金調達なんですけど…。
逆に資産サイドは、平均残存年数3-5年(住宅ローンなんて10年超)の貸出金。
結構ミスマッチしてますが。



よく聞く論調その3. 「証券化商品の価格が不透明である」、という批判


証券化商品=複雑=価格不透明、の部分もなくはないが。
証券化商品の売り物多い(買う人いない)=価格不透明、の部分が、より大きいように思われ。


アジア危機の頃は。
日本の主要行の発行する劣後債が、額面100%に対して60円でも買い手が付かない時だってあった。
銀行発行の、預金と同等の支払い順位である利金債だって、似たようなもの。
今は当然そんなことはないが。


需給のバランスが崩れて、全員が売りに回れば。
当然価格は、どこにあるか分からんでしょう。


よく株式だってイベントが起こればストップ安になるじゃん。
高い金出してCDとか本とか買っても、ブックオフで売る値段って、納得いかないし。不透明だよね。
ビックリマンチョコのシールだって、ブームが去れば、昔1万円で取引されたものも、二束三文に。


証券化商品に限った話ではない、訳で。
あんまり本質的な批判じゃないような気が…。



日本の銀行が危険、と言うつもりは全くない。
預金が一番身近な金融商品なので、例に使ってみただけ。
「証券化=危険」、みたいな、かつての「デリバティブ=危険」のような短絡思考が、正しいかどうか、ちゃんと判断して欲しい。


日経新聞は、格付け会社批判とかしているが。
自分の51%出資の子会社で、格付け会社経営して金儲けしてるのに。


株式会社格付投資情報センター(R&I)。
ここの売り上げの三分の一は、証券化関連の格付けだよ。
「格付け先から手数料をもらう構図に不信の目が」って朝刊に書いてあったけど。
自分のところだって、そうじゃん。


そのうち日経による格付け会社批判もおさまると予想。

このままだと自爆テロだよ…。