某経済紙を無批判に読むと、あまりに危険では? | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

某経済紙を無批判に読むと、あまりに危険では?

日経、レベル低すぎ。
8月26日付け本紙5面、「NY連銀、資産担保CPの受け入れ容認」との記事。


こんなの、大間違い。前からABCPは適格担保ですから。
新たに受け入れする、ぐらいの勢いで書いちゃって。
FRBのホームページ見れば、以前からABCPは公定歩合窓口貸出で金借りる時の適格担保だったことぐらい、書いてあるじゃん。
ここのFAQ4とか5とか。
http://www.frbdiscountwindow.org/cfaq.cfm?hdrID=21&dtlID=?hdrID=21


以下、引用。

NY連銀、資産担保CPの受け入れ容認――米紙報道

 【ニューヨーク=米州総局】ニューヨーク連邦準備銀行は、公定歩合で市中金融機関に資金を貸し付ける際の担保として、資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)を受け入れる方針を決めた。米ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が25日報じた。担保として差し入れ可能な資産の幅を広げることで、資金繰りが逼迫(ひっぱく)した金融機関の調達を容易にする狙いがあるとみられる。

 ABCPは売掛債権や住宅ローン債権を裏付けに発行される。リスク回避姿勢を強める投資家が購入を減らしているため、CP発行による資金調達は難しくなっていた。

http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20070825D2M2501U25.html


「米ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が25日報じた」とあるが。
人の書いた新聞記事、日本語にするだけじゃなくて、ちゃんと1次ソース(たとえばFedのHPとか)見に行って検証した?

元ネタはこれだと思われ。

http://online.wsj.com/article/SB118798079732208114.html?mod=hpp_us_whats_news


ちゃんと読むと。

- 以前からABCPはNY連銀差し入れ適格担保だったが、自行がスポンサー、あるいはコミットメントラインを提供している案件のABCPはその銀行のローン担保として受け入れ対象ではなかった
- その規制がなくなり、すべてのABCPが適格担保となった

と、書いてある。


中央銀行のシステムが理解できず、英語がちゃんと読めない、という二重の過ちを犯さないと。

あんな立派な記事は、なかなか書けない。


ちなみに前から、ABS(含むCLO)のAAA格とか、サブプライムローンそのものも、適格担保。
http://www.frbdiscountwindow.org/discountmargins.pdf


その記事の隣の「証券化商品 格付け大手を調査」という記事も。
8月16日Financial Times一面トップ、「Rating Agencies hit by subprime prove」の記事と、まったく同一内容ですから。


楽な商売だなー。日経の記者は。


ところで。

ABCPが適格担保である、ということと、FedがABCP買取オペをする、というのは全く別物ですので。
違いは。


前者は、銀行がABCPを購入して、それを担保にFedから金を借りる。
担保となったABCPが仮にデフォルトした場合でも、借りた金がチャラになるわけではなく。
銀行は、ABCPが生きようと死のうと、Fedに金返さなきゃいけない。
つまり、ABCPのリスクは、一義的に銀行がとっていて。
FedがリスクにさらされるときはABCPが死んでいて、さらに借りた銀行が金を返せない、というときのみ。
いわゆるDouble Defaultのときだけ。


後者は、Fedすなわち中央銀行が、ABCPのクレジットリスクを取る形。

だから、政策インプリケーションが、全く異なる。
これをごっちゃにする人があまりに多いんだよな…。


たとえば、こんな記事とか。
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/ab2a70225a6d24fea799fcfd59622aff


日本のメディアからの情報だけでなく、複数のメディアから裏づけを取らないと。
きわめてミスリーディング。

政策担当者も、日本語のメディアしか読んでないんだろうな…。

日経vsFT、日経公社債情報vsIFRなど。
クオリティ違いすぎだよ…。