もうサブプライム問題は | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

もうサブプライム問題は

飽きてきたんですけど…。


Bank of Chinaの話や、某再保険会社Aの持つ莫大なエクスポージャーの話をしてもいいのだが。



今回の混乱の原因は、すべてサブプライムのせいになっているが。


去年の後半から、住宅価格の下落(サブプライム云々に関係なく)、と、原油価格の高騰で、米国景気は下方圧力が掛かっていたが。


サブプライムローンの過大な信用創造と、株価上昇による資産効果によって、ネガティブな要因は覆い隠され。



取りあえず、米国景気の拡大は継続。



過大な信用創造が剥げると、株価が下落し。ネガティブな要因ばかり目立つようになった。


サブプライムばかり悪者にされるが、現物経済も落ち込んでいたわけだ。



今回の問題は、いくつかの点で考えさせられる。



まず。


事の発端は。


これまで時価評価されてこなかった、住宅ローンが、証券化されることによって時価評価の対象へと変貌し。


物凄い量の時価霍乱要因が、世界中に広がった。



少々質の悪いローンを抱えていても。


銀行はローンは時価評価しなくて済んだため、問題の認識には時間が掛かった。


日本の90年代の不良債権問題など、まさにそのせいで現状認識が遅れ、財政・金融政策が後手に回る原因となった。



しかし。


本来時価評価の対象外だった住宅ローンが証券化され。


時価評価が必要な債券、すなわち証券化商品となって。


それが、毎週時価の洗い替えが必要となる、マーケットバリューに敏感なABCP ConduitやSIV、ファンドなどに買われたため。


時価ぶれのリスクが、金融システム全体に広がった。


発行量も半端なものではなかったし。



そして、想定外のイベントで時価が急落し。


金融システム全体を、揺るがす事態に。



すなわち、過剰な「時価評価」が引き起こす、マーケットのボラティリティの増大。



そして。


過剰な「先進的リスク管理手法」が、問題をさらに広げた。


Value at Riskでリスク管理していると。


ボラティリティが増大すると、リスク量を削減せざるを得なくなる。


上記の過剰な「時価評価」によって、ボラティリティが増大。


ボラティリティが上がると、金融機関のリスクリミットが減少するため。


市場参加者が同時に持ち高を減らす必要が起こり。


限られたタイムフレームの中で、売りが、売りを呼ぶ展開に。



厳格にリスク管理を適用すると。


厳格に、ロスカットルールを運用しなければならず。


値段が下がると、強制ロスカット。


つまり、ボラティリティ上昇によって売りが売りを呼び、さらにボラティリティが上昇。


過剰な「先進的リスク管理手法」の適用によって、混乱はさらに拡大。



また、新BIS(バーゼルII)の導入により。


格付け会社から高格付けを得た資産に対して、必要とされる自己資本のクッションの量が急減。


そのせいで、銀行が高い格付けのついた証券化商品を買い進め。


格付け機関の格付け基準が甘かった、と気づいたときには時すでに遅し。


過剰な「格付け」信仰。



もちろん、問題の根底には、過剰流動性があったことは、言うまでもない。



過剰な時価評価。


過剰な先進的リスク管理。


過剰な高格付け商品への投資。


過剰な流動性。



上記のキーワードから、「過剰」という言葉を取ると。



時価評価。


先進的リスク管理。


高格付け商品への投資。


流動性。



どれも、とってもポジティブに響く、言葉たち。


ちょっと前まで、先進的な金融機関経営には、必須のキーワード、だったのではないでしょうか????




過ぎたるは、及ばざるが如し。


これまで理想とされた、金融機関経営の手法が、すべて否定されたような。



この意味で。


今回のイベントが、今後の金融機関経営に及ぼす影響は、計り知れないだろう。


だって、これまで「素晴らしいこと」とされてきたことが、過剰になされた場合、とんでもないリスクがあるということが明らかになったのだから。



だが。


こんな悲観的なことばかりでは、ない。



バブル崩壊以降に起こった金融危機の中で。


日本の金融機関の受けた傷は、欧米の金融機関と比べて、今回、もっとも浅い。



さらに。


過去の「~危機」、と呼ばれたときとの一番大きな違いは。


日本の銀行のファンディングの水準が、欧米の金融機関より、低いのだ。


つまり、邦銀のほうが、欧米銀よりも安く資金調達できている、ということ。



これは、今までになかったことだ。



つまりサブプライム危機は、日本の金融機関が欧米の金融機関に追いつき追い越す、千載一遇のチャンス、ということ。



日本人としては、ぜひこの機会に日本の金融機関が国際競争力を取り戻して欲しい。


そして金融庁、日銀をはじめとする監督当局は。


過剰にリスク回避的な行政指導をやめて。



市場でバリューがあるものが放置されている現在、ぜひ日本の金融機関が果敢にリスクテイクすることを、奨励して欲しい。


ここで一気に欧米の金融機関との差を詰めておかないと、あと10年は決して追いつけないような…。



千載一遇のチャンスを、ものに、してほしい。




本記事の補足で「過ぎたるは及ばざるが如し」というのを書いています。
是非ご覧ください。