剣と魔法と魔物が存在する世界。

若き炎騎士アレンは、騎士道を極めるため修行の旅に出かける事になった。

この物語は、出発の前日に起こった事件から始まる。


「本当に行くのアレン? 考え直さない?」


アレンの隣を歩く少女が言った。

彼女はサキュバス族の少女、リリア。

アレンとは同じ村の出身で、幼馴染である。


「ああ、もう決めた。僕は騎士道を極め、名を残す騎士になる。そのためには、この村にいるだけではダメなんだ」


若き剣士、アレンが答える。

彼は炎騎士のクラスを持つが、どちらかと言うと剣より頭脳のタイプ。だが、本人がその事に気づいていない。


「…私もついていっちゃダメ?」


「ついて来る意味はあるのか?」


そんな事を言われると、辛いし、なんて言っていいかわからない。

離れたくない。それだけだ。

そんなやり取りをしながら人気のない道を歩いていると、異変が起こった。





「何者だ!?」


アレンは素早く剣を抜き、盾を構えた。


「我らはある方のご指示により、そこの少女を連れていく」


三体の魔物、キマイラのうち、真ん中の青いキマイラが答えた。


「えっ?…私を…」


リリアに心当たりはない。

戸惑い、怯える。


「何!? 何故だ」


アレンは油断なく、三体を見据える。

強い。

アレンの力では勝てない相手だ。


「貴様には関係ない。大人しく死ね」


三体のキマイラは、容赦なく襲って来た。


「リリア! 僕の後ろに隠れるんだ!」


敵は強い。

だが、幼馴染を…リリアを渡す訳にはいかない。

アレンは剣を振るう。





「くっ!? 刃が通らない!?」


これほどとは。その差に驚愕する。


「そんな攻撃効かない。死ね」


キマイラが爪を振るう。





「ぐわあぁぁぁっ!!」


「アレンー!!」


強力な一撃に、アレンは吹き飛ぶ。

リリアは駆け寄る。

大切な人は無事なのか。


「ぐっ…り、リリア…逃げろ…」


「嫌だよ! アレンを置いて行けないよ!」


アレンの体には、無数の傷があった。

鎧は裂け、盾は粉々になっている。

そんな彼を、リリアは何とか連れて逃げようとする。


「こい」


「いや! 離して!」


キマイラは無理矢理リリアを引き離す。


「アレン! いや! アレンー!!」


「リリア…」


連れ去られていく彼女にアレンは手を伸ばす。

そこで、意識が途絶えた。