12篇 遠い日の約束 その17
三人での食事は楽しかった。女二人の間に割り込む形になってしまったが、顔合わせを済ませた後だからか、和やかな雰囲気で時間を過ごせた。姉が一緒なので、其れほど深い話は出来なかったが、親しくなれたとは思う。帰りは電車だったので駅まで並んで歩いた。行き先が違うので改札口で別れた。姉が一度振り返って手を振った。見ると志穂も遠慮がちに手を振っていた。僕は志穂を確り見つめてから片手を上げた。一歩踏み込んだ気持ちを志穂は察してくれただろうか。
電車に乗ると思ったほど混んではいなくて、二人分の空席を見つけて腰を下ろした。
ねえ、もしかして、志穂ちゃんと子供の頃に会った事がある?
姉が声を潜めながら聞いて来た。僕は素直に頷いた。
川内町で静養してた時?
やっぱり、と言うような言い方だった。自分たちの出会いが川内町だから、僕たちが会っていても不思議では無い、と考えたのだろう。
地元の子たちと馴染めないで一人で居たら声を掛けてくれたんだ。
向こうは覚えていないみたいだけどね。
覚えていたとしても、大人になった姿など想像もつかないだろうから、判らなくても当然だけど、残念な気持ちはある。しいちゃん と よし君 だけで名字も知らないのでは、雲をつかむような話だと思う。
私がそれとなく聞いて見ようか?
姉にしてみれば、もどかしいのかも知れない。自分たちと同じ出会いをしているのだから、もっと親しくなって欲しいのだろう。
いや、いい。僕がちゃんと言うから。
僕は僕の口で しいちゃん と呼びかけたい。思い出してくれるかどうかは判らないけれど、期待してしまうのだ。