お早う御座います、所沢市田中則行です。産経新聞 くらし面にて掲載中の話の肖像画・郷ひろみさんの3回目、今回は「撤退したリハーサル」と題して年間50回以上の単独コンサートを行ってきたことと、華やかさ且つ迫力あるエンターテイメントの創造とその拘りが取り上げられました。

(産経新聞 くらし面・1月4日報道発表)
《16歳から毎年のように全国ツアーをこなしてきた。アイドル出身で未だに年間50回以上の単独コンサートを行うアーティストは他にいない。華やかで迫力あるエンターテイメントの創造。その拘りとは…》


郷:ステージに上がれば「郷ひろみ」としてのスイッチが自然に入る。自らスイッチの切り替えを意識したことはないんです。リハーサルで体に覚えさせる。コンサートが始まる2ヶ月程前から楽曲を決め、アレンジも違うなと僕が感じれば直してもらう。1ヶ月前にはバンドメンバーと本格的なリハーサルに入り、10日程前に大きなスタジオを借りてコンサートと同じセットを組んで最終チェックをする。ステージについての考えは“緻密なもの”を作りたいと言うことです。リハーサルでボーッとしていることができないくらいの緻密さを求めてるんです。そこに一切の妥協はありません。

「リハーサルをきちんとやらないと言うことは、きちんとやらない準備をしているだけ」と言うのが僕の持論。稽古とはそう言うものなんです。一生懸命やれば、それが本番で全部に表れる。リハーサルだから適当にやると言うのは、失敗する準備をしているようなものなんです。そう言う経験をしてきたから、より入念な準備を心掛けています。

ステージは生で歌うので、その日の声の調子は日々違うし、体のキレも違う。その調子を自分の中で理解して「じゃあどうしたらいいか」と言うことに体がごく自然に反応する。そのためにもリハーサルが凄く大事になってくる。「リハを60%くらいやり、あとの40%は本番でやる。それで100%」と言う考えでは決して本番で100%にはならない。それは錯覚です。リハ60%なら本番も60点しか取れない、どんなにやっても…。70%なら70点が最高です。100%大丈夫だと納得してやると、そこでアドレナリンが出て、もしかして120点取れるかも知れない。100%やって90点と言うこともある。そう言うこともあるけど、70%でやった場合、70点以上はない。他の人はわからないけど、僕はそう思う。



《プロスポーツの一流選手も練習できっちりできていないと、本番では絶対にできないと…》

郷:いい話ですね。実戦を経験してきた者にしかわからないかなと思います。緻密、緻密、緻密にして、気も抜けない緊張感です。ダンスでもコーラスでもピタッと決まれば「ウォーツ」となる。僕だけでなく、音も照明も全て一緒にならなきゃいけない。

スタッフはみんな大人だから理解しているはず。いかに細かいことが大切なのか。細かいことをきちんとやらない人間は大きな仕事をできるはずがないんですよ。「僕、大きな仕事だけやるから」「細かいことはやってこなかったから」では緻密さに欠ける。細かいことをずっとやってきたから、実は大きなことができるのだと思うんです。積み重ねでしかない、そう考えると僕がやってきた50年と言うのは、確かに大きいなと。50年働いてきたんですから。普通の人で大卒なら72歳です。細かいことを積み重ねた上で、経験を沢山積んできている。だからこそ経験の中でしか語れない部分も、多々出てくるんですよ

(聞き手:清水満)





その4へ続きます