今晩は、所沢市田中則行です。交通タイムス社刊・CARトップ編集部と京商とのコラボ企画によるミニCARトップ1/64スケールモデル トヨタ・GRスープラの解説の二回目です。
前回に続き“ドリフトキング”土屋圭市さんが語るGRスープラ筑波サーキット全開試乗を解説します。
9月某日に筑波サーキットで試乗テスト走行した新型スープラで気になる点は電子式駐車ブレーキであることだ。レバー式サイドブレーキならアンダーステアを解消するための第3のブレーキとして使用でき、土屋氏の曰く「遊び=ドリフト」にも使えるが、新型スープラに採用している電子式ではそれができないと言うのだ。土屋氏の中ではサイドがなくなる、つまりクルマの楽しみが一つ減ることを意味すると考えられる。普通の乗用車なら問題なしだが、新型スープラは無駄を楽しむスポーツカーであることをトヨタは忘れないでほしいと望んでいる。

走破性の面ではどうなのか。先ず土屋氏が感じたと思われる面は基本性能の高さである。80系のコントロール性の高さでは今もなお健在だが、スポーツカーのコーナリングスピードではなく、良くも悪くもソアラの延長であったのでここは最大の進化と言えよう。

ショートホイールベースに低重心と素性の良さを活かした旋回性の高さに加え、フロントの信頼性はグリップの低いウエット路面でも信頼性が非常に高く評価されている。ステアリングフィールは決してピーキーではない、スポーツカーらしくバキッと活かしている。サスペンションの味付けはストローク、沈み込みを含め「スポーツしているな」と土屋氏は感じるが、筑波サーキットのウエット路面では余りサスペンション自体にGを掛けられず突っ張っている印象の結果であった。人其々によってはピーキーな特性に感じてしまうと言う者もいるかも知れない。

仮に路面がドライ状態ならタイヤのグリップが出ると思われるので、足周りはよりしなやかさを感じる筈である。更にブレーキはハイペースで周回を重ねても効き、フィーリング共に問題点はなかった。これから推測すると日本のサーキットではよりハイグリップタイヤを装着させた方が新型スープラの旨味が出せる。そうした意味ではチューニングを施すことも考慮しているのであろうか。その面を含め開発の陣頭指揮を執った多田哲哉さんらしいと感じたと言う。

グリップもドリフトも自由自在。これらの懐の深さは2代目80系と同様で、86にも新型スープラと同様のフィーリングを活かしている。これはトヨタの故・成瀬弘氏の血統を受け継いだテストドライバーがいる証拠であり、BMWとは違う”トヨタの味“が備わっていることは土屋氏にとって喜ばしい。ただ、ドリフトさせると新型スープラ独特の癖が顔出しする。具体的にはコーナー入口でフットブレーキの強弱で後輪側が奇麗に効きカウンターを当て入っていけるが、そこから脱出に向けてアクセルオンすると「ピクッ」と動く。別にコントロールできない訳ではない。慣れていれば気にならないが、まだ理解できないと言う人には恐怖感を感じてしまうのではないのかと思われよう。

土屋氏が思うには、スープラの名を受け継ぐモデルであるからこそ他の乗用車より厳しい目で見てしまうのだが、スタートラインとしては良い所に来ていると言う。それまでのトヨタの80点主義ではなく確実に100点を狙い目とする1台であることに間違いない。そしてスポーツカーは育てていくことを必要としているので、トヨタ・86&スバル・BRZと同じように今後の進化と熟成に期待したい。





その3へ続きます