「大阪ハムレット」 公開中


久保家は大阪の下町で暮らす5人家族。

ある朝、お父ちゃんがぽっくり逝ってしまう。

働き者のお母ちゃんは昼間は病院、夜はスナックで働いている。

長男・政司は見た目よりも老けてみえる中学3年生。

次男・征雄やんちゃな中学1年生。担任教師を渾名で呼び捨て。

三男・宏基は本気で女の子になりたい小学生。

お父ちゃんの葬式の日、会ったこともないおっさんが現われて

「にいちゃん!」と叫びながら、遺影を前に泣き崩れてしまった。

しばらくして、そのおっさんが家に住み始めた。

そして長男・政司は年齢を偽って女子大生と知り合い、

彼女の言動に戸惑いながらも、その生い立ちに自分を重ねて行く。

次男・征雄は担任教師から「ハムレット」と呼ばれていることを知り、

行き慣れていない図書館で生まれて初めてのシェイクスピアを借りる。

三男・宏基はクラスでやる学芸会の演目「シンデレラ」の

シンデレラ役に推薦され、周りに冷やかされながらも、

大好きな叔母・亜紀ちゃんの言葉を胸に発表会を迎えるのであった。

そして、お母ちゃんにも大きな変化が...。


東京国際映画祭にて日本映画・ある視点部門特別賞受賞作品。

原作は森下裕美の同名漫画。

この方の作品「少年アシベ」には漫画とアニメでお世話になってました。

監督は光石富士朗。「おぎゃあ」や「富江 replay」、

「まっすぐいこうぜ!」などを手掛けた。

出演はお母ちゃんに松坂慶子。数々のドラマ・映画に出演。

カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品「死の棘」でも主演。

お父ちゃんの弟に岸辺一徳。同じく「死の棘」に主演。

松坂慶子とは殺伐とした夫婦を演じた。

お父ちゃんに間寛平。写真が出てくるだけで

笑いがとれる人は少ないです。

三人の息子に久野雅弘、森田直幸、大塚智哉。

他に加藤夏希、本上まなみ、白川和子など。


とてもすばらしい作品に出会えました。

いろんなところでじわっと泣けます。

でも、「さぁあ泣いてください。」という押し売りの感動ではなく、

さりげない言葉や行動から伺える思いが心にしみこんでくる感動。

何年か前にレンタルで「死の棘」を観て、

女優・松坂慶子の凄さを感じましたが、

今回の作品では違う凄さを感じました。

何が起きても動じない、笑いながらも

真剣に受け止める下町の肝っ玉かあちゃん。

こんなお母ちゃんが日本にたくさんいたら

嫌な事件も起きないのではないかと

希望すら感じさせる存在感でした。

岸辺一徳も「死の棘」や「鮫肌男と桃j尻女」などで観て、

地味ながらいろんな演技ができる役者さんだなぁと

思っていましたが、ここでも新たな驚きを見せてくれました。

“どこにでもありそうな家族のどこにでもいそうなおっさん”

簡単そうでいて、極めて難しい役を見事に演じていました。

画面に入ってくるだけでその場の空気を

一瞬にして変えてしまう力がこの方にはあります。

そして忘れちゃいけない3人の息子たち。

別の作品で見かけた役者さんもいましたが、

みんな本当の兄弟、本当の家族に見える

そんな見事な演技を披露してくれました。
とくに三男・宏基役の大塚智哉は“女の子になりたい男の子”

という難しい役柄を細やかに丁寧に演じていました。

血の繋がりがないかも知れない兄弟とその母親、

そして叔父さんがそれぞれの問題を抱えながらも、

たくましくかっこよく生きていく姿が素晴らしい作品。

大阪の下町を感じられたところも面白かったです。

出演者の後ろや画面の隅にツッコミどころがあって

そこかしこで小さい笑いを誘います。

映画には脚色はつきものですが、これに関しては

ほとんどまんまなんじゃないかと思っています。

そして自然光を活かしたカメラワークが町の風景を

よりリアルに感じさせてくれました。


“シェイクスピアと大阪弁”

出会ってはいけない二人が出会って

素晴らしいものが生まれてしまいました。

原作者は「ハムレット」を大阪弁でやったら

台無しになるんじゃないかと狙って描いたそうですが、

その意に反して見事にコラボってました。

「ハムレット」の読み過ぎでセリフが頭に入ってしまった次男が

大阪弁で一節を読み上げるシーンはなんかかっこよかったです。


パンフレットにあった「○型自分の説明書」ならぬ

「“関西人”説明書」も笑えました。例えば、

・「同じ単語を2回繰り返して会話する」

(「ちゃうちゃう」「ないない」「そやそや」

「あかんあかん」「やったるやったる」)

・「オチのない話は許せない」

・「固有名詞に“ちゃん”をつける」(「あめちゃん」)

・「会議や打ち合わせでも“笑い”が重要だと思っている」

・「いまだに“山手線”を“東京の環状線”と言う」

・「上沼恵美子とやしきたかじんは絶対だ」

・「洋服の柄から、獣の生命力が感じられる」

などなど、他にもたくさんありました(表現がまた面白い)。

あるあるというものから、そんな風に考えているのかと思うものまで、

笑えるものばかり。全部当てはまる人がそばにいたら

イライラすること間違いなしの項目ばかりでしたが( ̄m ̄*)

(大阪の方ごめんなさい)



案山子の独り言
(C) 2008「大阪ハムレット」製作委員会