「アメリカン・ヒストリー」 1998年公開


スキンヘッドと胸に刻まれた鉤十字のタトゥー。
ネオ・ナチに陶酔するデレクは

暴力と破壊を繰り返す日々。
弟・ダニーはそんな兄を慕い、

学校にはヒットラーの「わが闘争」についての

レポートを提出し、呼び出される始末。

デレクの言動はエスカレートしていき、

ついには自宅を襲った黒人を殺してしまい、

刑務所に入ることに。
3年の刑期を終えて、出所したデレクだったが、

そこに以前の名残りはなかった。
改心した彼は、
これまでの自分を後悔し、

その行動を恥じていたのだ。
しかし、兄に憧れを抱いていたダニーは

デレクが刑務所にいる間にネオ・ナチへと傾倒し、
以前のデレクの仲間とつるみ、

その言動は刑務所に入る前のデレクそのものだった。

そんな弟の姿に驚き、嘆きながらも、何とか自分の考えを

弟に伝えようとするデレクだったが...

監督はトニー・ケイ。これが初監督作品となる。

兄・デレク にエドワード・ノートン。

「真実の行方」や「ラウンダーズ」、
「ファイト・クラブ」、「25時」に出演。
弟・ダニー にエドワード・ファーロング。

「ターミネーター2」に出てたのはもう昔?

キャスティングを知って最初に思ったこと。
スタッフは二人の“エドワード”を

どうやって呼び分けていたのかなぁ。
という、極めてどぉーでもいいことでしたが、
内容はどぉーでもよくないどころか、

かなり深くて重いテーマです。
白人至上主義を掲げる「ネオ・ナチ」。
移民や外国人労働者の排斥を訴え、

暴行・略奪などの犯罪行為を行う集団。
兄はそれこそが正しい道と思って行動してきたが、
刑務所の中で知り合った黒人と会話し、

お互いを知っていくことで、憎しみからは

何も生まれないと悟り、考えは変わっていく。
そして、それは弟にも伝わっていくのだが、

「めでたし。めでたし。」とハッピーエンドに

ならなかったのは、映画的な演出のせいなのか、

リアリティを追求した結果なのか、

アメリカにおける、表面には表れない差別の現状を

知らない私には、想像することしかできません。

ただ、人はお互いを知ることができる。と気付かされました。

しかし、同時に差別という意識は、人に違いがある限り

生まれてしまう感情なのかもしれないと、

結論を出すことのできない課題を突きつけられた思いです。


夜の競技場で話をしながら、

お互いを理解しようとする兄弟の姿が印象的 でした。
デレクが人を殺してしまうシーンの

嫌な鈍い音も忘れられません。

あんな方法をよく思いつくなと、

人が持つ残虐性を見せ付けられました。

また、エドワード・ノートンはこの作品のために

デ・ニーロ並みの肉体改造を行い、かなりマッチョになりました。

アメリカで同じ年に公開された「ラウンダーズ」では、

体重を落とし、だらしな~い役でマット・デイモンと共演してます。