「ヒトラーの贋札」 2007年公開


時は第二次世界大戦の真っ只中。

贋札や偽造パスポートを作ることにかけては

右に出る者のいないほどの技術を持つ

ユダヤ人・サロモンは、ある日

ドイツ軍によって連行され強制収容所へ送られる。

そして収容所でこっそり描いた絵を気に入った

ヘルツォーク少佐やドイツ軍のために、

さまざまな絵を描くこととなった。

しばらくして、サロモンと数人のユダヤ人が

ザクセンハウゼン強制収容所へと移送されることに。

これはいよいよガス室へ送られるのだと

悲観にくれる彼らだったが、

行った先で待っていたのは衣服と靴の支給。

驚くべきことに煙草まで。

彼を含む5人のユダヤ人は、他の収容者とは

別の棟に連れて行かれた。

そこには白衣を着て、贋札を作る作業に

従事させられている大勢のユダヤ人がいた。

これこそが“ベルンハルト作戦”であった。

ドイツと敵対する連合軍に属するイギリスの

ポンド紙幣を偽造し、経済を混乱させる計画である。

他の収容者には極秘で行われており、

他の棟とは比べ物にならない待遇での作業。

この作戦が成功すれば、当然

ドイツ軍の状況を有利に持って行くことなり、

それは同時に自分の家族や同胞への裏切り行為となる。

失敗すれば元の強制所の生活に逆戻り。

それはいつ死んでもおかしくない生活を意味している。

彼らの前にあるのは、これ以上ないほど

残酷な選択肢であった...。


アカデミー外国語映画賞を受賞した作品。

監督はシュテファン・ルツォヴィツキー。

出演はカール・マルコヴィックス、アウグスト・ディール、
デーフィト・シュトリーゾフ、アウグスト・ツィルナー
マルティン・ブラムバッハ、ドロレス・チャップリンなど。


収容所の雰囲気には似つかわしくない優雅な音楽、

やわらかいベッド、週一回必ず浴びれるシャワー。

これらの状況は彼らの感覚を麻痺させようとするが、

作戦が成功しても、待っているのは

ドイツ軍からの拍手と祝福ではなく、

口封じのために訪れる死であることを

悟っている彼らには、いったいどの道を

選択すればいいのかという苦悩しかない。

つい、自分ならどうするか考えてしまうが、

この状況は自分の想像をはるかに絶する

苦しみと痛みがあることは確実であり、

その中で何かを選択するなんてことは

想像するよりもはるかに困難なことであろうと思う。

考えたこともないような痛みと苦しみから開放されるために、

死を選ぶことは充分にありえる行為だと思うが、

少しでも希望が残っていると感じられれば、

生きていたいと思うのも当然であり、

そう思って欲しいと強く願うばかりである。

しかし、生きていたいと思うのは

少しでも幸せと感じることがあり、

それがこの先にも待っていると思えるからこそ

できうることなのかもしれない。と

語り始めるたら輪廻のようにキリがないので

この辺でやめにしときます<(_ _)>

ただ確実に言えることがひとつある。

自分の命と自分の信念を天秤にかける。

神に試されているような選択だが、

これを行ったのは神ではなく、人が作った

戦争という暗黙の非情なシステムだということ。


ベルンハルト作戦は実際に行われた作戦であり、

この作品は物語にも登場するユダヤ人の

印刷技術者の体験を元に作られた。