「譜めくりの女」 2008年公開


肉屋のひとり娘・メラニーの夢は、

コンセルヴァトワール(パリ国立高等音楽学校)

に入学してピアニストになること。

日夜猛練習を積み、試験に備えていた。

そして試験当日、母親と試験会場の廊下で、

緊張をほぐすかのように話していると、

とうとうメラニーの名前が呼ばれた。

試験会場の部屋に入っていくと、

ピアノの前に5人の試験官がおり、

その目はメラニーに集中していた。

試験官に一礼して座り、ピアノを弾き始めるメラニー。

出だしはまずまずで、試験官の反応も良かった。

しかし、演奏も中盤に差し掛かった頃、

試験官の一人である女性ピアニストのファンが、

彼女のサインを求めて部屋に入ってきたのだ。

驚くべきことに、ピアニストは面倒くさそうにしながらも、

ファンが持ってきた自分の写真にサインをしたのだ。

そんな場面に気をとられてしまい、

メラニーの演奏は崩れ始めてしまった。

それでも何とか演奏を終え、部屋を出てきた

メラニーの頬には、涙がつたっていた。

それから十数年後、ピアニストの夢を断たれたメラニーは、

有名な弁護士ジャンの法律事務所で実習生として働くこととなった。

そんなある日、ジャンの家で息子の世話係を

探していると耳にして名乗り出るメラニー。

約束の日、ジャンの家の最寄り駅で待っていると、

彼の妻と息子が車で迎えに来てくれた。

なんとジャンの妻アリアーヌは、メラニーのピアノ試験中に

サインをしたピアニストだったのである...。

監督はドゥニ・デルクール。

主演はピアニスト・アリアーヌにカトリーヌ・フロ。

「奇人たちの晩餐会」や「女はみんな生きている」などに出演。

成人したメラニーにデボラ・フランソワ。2005年のカンヌで

パルムドールを受賞した「ある子供」に続き本作が2本目。


観終わって最初に思ったこと。

“女は美しく、恐ろしい生き物だ”

ほとんど笑顔を見せることはないが、

決して無表情というわけではないメラニー。

目の中に秘めた思いを強く感じさせる。

少女時代と成人してからの役者は異なるが、

どちらも表情が豊かとは言いがたく、

しかし目には確固たる意志が感じられる。

何を考えているのかわからないが、

確かに何かを考えている。というのが適切か。

“譜めくり”という、演奏を左右する役目を

アリアーヌの元で果たすこととなったメラニー。

演奏家と譜めくりの息は、気心知れた恋人のように

ピッタリで、初めの演奏会は大成功のうちに終わった。

そして気を良くしたアリアーヌは徐々に

メラニーに気を許し、信頼を寄せていくのだった。

そんな中で密かに交わされる息子トリスタンとの秘密や、

アリアーヌの仕事仲間であるチェリストの足の怪我など。

次第にアリアーヌにとって良くないことが起こり始めていた。

しかし、それはメラニーの復習劇の一幕に過ぎなかった。

最後にアリアーヌに対してメラニーがとった行動とは...。


床を歩く“コツコツ”という足音が印象的な作品でした。

音の強さやスピードでその人物の感情が伝わってくるようです。

そして“恐ろしい子!”メラニーのインパクト!

どこからどこまでが計画なのか?考えるだけでも恐ろしい。