「ニック・オブ・タイム」 1995年公開
ある日のロサンゼルス、正午。
妻を亡くした税理士のジーン・ワトソンは
幼い一人娘リンを連れて、これから暮らす
新しい生活を夢見て、駅に降り立った。
そんな彼らに刑事を装った男・スミスと、
パートナーの女・ジョーンズが接触してきて、
あっという間に拉致され、娘の命を盾に脅される。
スミスたちの要求は金ではなかった。
それは“ある人物を午後1時半までに殺せ”
という驚くべき内容であった。
拳銃とその人物の写真を渡され、
あるホテルへ行くように命令されたワトソン。
そこでは女性知事・グラントの演説会が予定されており、
彼女の大きな写真が天井から垂れ下がっていた。
なんとその顔は、スミスたちから渡された
人物の顔と同じだったのだ。
高まる心臓の鼓動と共に、ワトソンの孤独な戦いが
彼の意に反して始まるのであった...。
監督はジョン・バダム。ジョン・トラボルタが一躍スターダムへと
のし上がることとなった「サタデー・ナイト・フィーバー」や
「ショート・サーキット」、「張り込み」などを手がけた。
主演はワトソンにジョニー・デップ。この方の説明は不要かと。
スミスにクリストファー・ウォーケン。ヴェトナム戦争に
出兵した兵士のその後を描いた名作「ディア・ハンター」で、
アカデミー助演男優賞を受賞し、その鋭い眼差しで
数々の映画において、ただならぬ存在感を放つ名優。
この映画の大きな特徴は作品の中での時間の経過が、
現実の時間の経過と同じような感覚で進んでいくという、
極めて“24”的な作品である(こちらの方が20年近く早かったが)。
映画の長さも90分とされている(実際はもう少し短くなるが)。
そんな細かいことを感じさせないほど、
ハラハラドキドキ(ベタな表現ですいません)の、
あっという間の90分を過ごすことができる作品です。
ホッとできる時間はほとんどありません。
“手に汗握る”とは、まさにこのことだ感じました。
何より驚きなのは、“一般的な父親”を演じるジョニー・デップ!
最近の彼からは想像もできない役です。
編集によってうまくまとめられており、
ホテル内の様々な場所で起こる出来事が、
見事に時系列で表現されています。
「移動するの、ずいぶん早くない?」とか、
「いやいやいや、それは見つかっちゃうでしょ。」
なんていうツッコミは、思っても口に出さないで観てください。
そんなことで立ち止まって欲しくない作品ですので。
ちなみに“ニック(nick)”には“刻み目”という意味があります。