落下の王国」  2008年公開

時は1915年。映画の撮影中、

橋から落ちて大怪我を負い、

病院のベッドに横たわるスタントマンのロイは、

追い討ちをかけるように、

私生活でも恋人を主演俳優に奪われ、

自暴自棄になっていた。

そこに現れたのが、オレンジの樹から落ち、

腕を骨折していた5才の少女、アレクサンドリアだった。

ロイは動けない自分に代わって、自殺するための

痛み止め薬(モルヒネ)を薬剤室から盗んでこさせるべく、

彼女を利用することを計画する。

アレクサンドリアの気を引くため、

ロイが思いつきで語り始めた冒険物語。

それは6人の勇者が世界を駆け巡り、

悪に立ち向かう「愛と復讐の叙情詩」だった...。
(パンフレットから)


監督はターセム。「ザ・セル」に続き、

本作が2度目のメガホンとなる。

提供者として、デヴィッド・フィンチャーと

スパイク・ジョーンズの名前も挙がっている。

これはターセムが尊敬し、

同志でもある映画監督二人の名前である。

出演している役者は有名どころを使わず、

本作が初出演の俳優もいる。

構想には実に26年をかけ、撮影期間は4年間にも及んだ。
中には1秒も移らないシーンもあり、

その為だけに世界中の都市を駆け巡ったのである。


スローモーションや景色を広角でとらえることで、

一瞬一瞬がまるでひとつの作品のような

素晴らしい映像の世界となっている!驚きの連続!
日本人デザイナー石岡瑛子のデザインによる、

衣装やセットも色彩豊かで一見の価値あり。

綺麗な紅が印象的でした。

この作品はCGを一切使用してないと聞きます。
いったいどうやって撮影したのか、

検討もつかないシーンが次々と目の前に広がる。
そして現実と空想が交錯する世界でもある。
ロイが語る空想世界の登場人物には、

現実世界の人間の心情が投影されており、
アレクサンドリアの献身的な犠牲と励ましで、

物語にも変化が現れる。
二人は物語の登場人物に自分を重ねて、

現実世界の自分たちを奮い立たせる。
アレクサンドリア役の少女はこれが映画発出演!
とは思えないほどの素晴らしい演技で、

映画の世界へ導いてくれます。
そして、シリアスな中にも小さな笑いが

バランス良く散りばめられて、物語をテンポよく進めていき、

完全に引き込まれて時間が早く過ぎていきました。
エンドロールが始まっても、
席を立つ人はひとりもいませんでした。
こんなことは単館上映の映画館でも

体験したことはないかもしれません。

CGを一切使わず、徹底したこだわりを持って撮る。

この作品は映画そのものへのオマージュのように感じました。

ある動物が泳ぐシーンも見物です。

「あれっ?泳げるの!?」ってね。