「おくりびと」 2008年公開
オーケストラのチェロ奏者である小林大悟は、
ある日、突然の楽団解散によって職を失い、
これを機にチェロを売り払い、音楽の道を諦める決意をする。
そして、実家の山形へ妻の美香とともに戻ることにした。
大悟の父親は、小林が幼い頃に愛人をつくって出て行き、
母親は小林が音楽留学の間に他界していた。
「旅のお手伝い」という文句で見つけた好条件の仕事は、
想像していた旅行代理店ではなく、
納棺という、今まで接点の全くない世界だった。
大悟を面接した佐々木社長は、勘ですぐに採用を決めてしまった。
就職先が決まったものの、妻にははっきりと
言えずに、冠婚葬祭関係と濁す大悟。
はじめは慣れなかった仕事であったが、
いくつもの死を見送るうちに、納棺師という仕事を理解していく。
しかし、地元の同級生には「あんな仕事」と軽蔑され、
大悟の仕事がわかった美香も、納棺という仕事への理解がなく、
「汚らわしい」、「辞めたら迎えに来て」と実家へと帰ってしまう。
ひとり残された大悟は、納棺の仕事をもくもくと続けていく。
しばらくして、妻が戻ってきて妊娠していることを告げる。
しかし、いまだ大悟の仕事への理解はなく、
生まれてくる子供のためにも辞めて欲しいと言ってきた。
そんなとき、一本の電話がかかってきて、
血相をかえた大悟はまた仕事へと向かうのだった...。
監督は滝田洋二郎。「病院へ行こう」や「秘密」、
「陰陽師」、「バッテリー」などを監督。
今作で第32回モントリオール世界映画祭グランプリ、
金鶏百花映画祭国際映画部門の監督賞を受賞した。
出演は大悟に本木雅弘。「シコふんじゃった」や「GONIN」、
「スパイ・ゾルゲ」、「鉄コン筋クリート(声)」などに出演。
妻の美香に広末涼子。同監督作品「秘密」や「鉄道員(ぽっぽや)」、
「恋愛寫眞」、「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」などに出演。
納棺の会社社長に山崎努。言わずと知れた名優。「八つ墓村」や
「お葬式」、「マルサの女」、「僕らはみんな生きている」、
「模倣犯」、「13階段」など多くの作品に出演。
他に、余貴美子、吉行和子、笹野高史、杉本哲太など。
心の準備はしてましたが、やはり泣いちゃいました。
性別も年齢も、様々な死が登場します。
女性だと思ったら男性だった方、
幼い子供と夫を残して逝ってしまった女性、
バイク事故で亡くなった女子高生、
まだ幼いクリスチャンの少年、
家族からのキスマークで送り出されるおじいちゃん、
ルーズソックスに憧れたおばあちゃん、などなど。
ひとつひとつの死は、それぞれの人生の最期であり、
それぞれの人生そのものであるように感じます。
今はもう何も語ってはくれない、その人を思い、
その人の家族を思い、身なりを整え、化粧をし、
今までで最高の姿で送り出す。
その姿勢に感動し、その人の身になって考えるとは、
まさにこういうことなのではないかと感じました。
ひとつひとつの動作も、まさしく
葬儀という儀式そのものにふさわしい、
崇高な所作という雰囲気が伝わってきました。
最期だからこそ、たくさんの思いと最高の演出で送り出す。
その人を思えば、当たり前のことだが、
忘れがちなことを気付かせてくれました。
結婚式のことを考えるように、葬式のことを考えるべきかな。と。
食事のシーンに出てくる食べ物が、
美味しそうでもあり、愛おしくもあり、心苦しくもありました。
生きていくってのはこういうことなんだ。と。
山崎努扮する社長の言葉。
「死ぬ気になれなきゃ食うしかない。」「困ったことにな。」