「イントゥ・ザ・ワイルド」 2008年公開


大学を優秀な成績で卒業したクリストファー・マッカンドレスは

貯金を全て寄付し、あらゆるカードを処分し、

中古のダットサンに乗り、家族の前から姿を消した。

アリゾナの湖で夜を明かしてるときに、鉄砲水に襲われた彼は

車と残りの所持金を捨てて歩き出す。アラスカを目指して。

彼は自分の名前をアレキザンダー・スーパートランプとした。

(トランプは“放浪者”の意で、カードのトランプとはスペルが異なる)

途中で出会った、車で気ままに旅をす

ヒッピーのカップル、レイニーとジャン。

サウスダコダ州で大農場を営む、ウェイン。

カヤックで川を下っているときに出会ったカップル。

レイニーとジャンに教えてもらった、

コミュニティで知り合った16歳の少女トレイシー。

ソルトン・シティで知り合った老人、ロン・フランツ。

様々な出会いと別れを繰り返し、その間に準備をし、

家族の元を離れて2年後、彼はとうとうアラスカに着く。

そこで乗り捨てられたバスを見つけ、住家とする。

猟銃を持ち狩りをし、地面を這いつくばり、

食用の植物を探し、自給自足の生活を始める。

しかし、そこには自然の驚異が立ちはだかる。

そして、彼は自然の罠にはまってしまい、もがき苦しむ、

そんな苦しみの中で、最期に彼が見つけた真実とは...。


監督はショーン・ペン。俳優としても数々の映画に出演しているが、

監督としても「クロッシング・ガード」や「プレッジ」などを手がけている。

主演はエミール・ハッシュ。「スピード・レーサー」などに出演。

エミールの母親にマーシャ・ゲイ・ハーデン。

「ポロック 二人だけのアトリエ」や「モナリザ・スマイル」、

「ミスティック・リバー」などに出演。

エミールの父親にウィリアム・ハート。。「蜘蛛女のキス」や

「A.I.」、「バンテージ・ポイント」などに出演。


複雑な家庭環境の中で、息子を演じ続けていた主人公。

この旅はもっと前から決まっていたことなのだと知る。

卒業式後の家族との食事の中で、

父親が「新しい車を買ってやろう。」と言う。

彼は答える。「そんな人間だと思っているの?」

大農場の経営者ウェインに、アラスカへの旅を熱くかたる主人公。

「アラスカへ行くんだ。荒野のど真ん中で生きる。

特別な瞬間を、その場所で!」

誰もが感じることのある、今の自分への自問自答。

両親に対する反抗だけで旅立ったわけでない。

ましてや、自分の居場所を見つける旅ではない。

本当のことを知るための旅。真理を求める旅。

「家族はどうしているの?」という質問は無用なものとなる。

誰にも告げずにいってしまうのは、ヒッピーの女性が言うように

公平なことではないかもしれない。

しかし、それを犠牲にしてまでも、求めたいものがあるとき、

人はなりふり構わず、進むだけだと知る。

そこに待っているものが何であれ、それを求めるだけだと。

自分の人生は自分のもので、他の誰かのものではない。

だから、この旅を誰も止めることはできない。

100%共感できるか?と聞かれれば、答えは「ノー」だ。

けれども、この旅の終わりに彼がたどり着いた真理は、

それだけのことをする価値があったのだと思う。


偶然出会ったヘラジカを撃って、その肉を食べようとするが、

あまりの大きさにてこずり、結局ウジがわいてしまう。

物事には適切な量というものが大きく影響してくる。

自分を見失い、多すぎても駄目、だが少なすぎても駄目。

多ければ多いほどいいと考える人も少なくない。

しかし、それは自分にとって良いことばかりを

招くわけではないと知りました。