「グッドモーニング, ベトナム」 1988年公開


時は1965年、ベトナム戦争の真っ只中。

米軍将兵たちの中には、この目的と終わりの

見えない戦いに対して不安を持つものも増えていた。

そんな彼らの士気を高めようと、テイラー将軍は、

本国から米軍放送の人気ディスクジョッキー、

エイドリアン・クロンナウアを呼び寄せた。

クロンナウアは武器を持たず、戦場には

おおよそ似合わないラフな格好でサイゴンへとやって来た。

軍服はおろか、敬礼さえも好きではないという

この一等兵DJに、迎えに来たガーリック一等兵は

ただただ驚くばかりであった。

しかし、彼をもっと驚かせたのはクロンナウアの放送であった。

今までの、軍の検閲を通ってきた代わり映えしないニュースと

退屈な音楽とは打って変わって、響き渡るロックと

マシンガントークで繰り広げられる彼の放送が、

米軍兵士を虜にするのに時間はかからなかった。

軍の上層部を除いて。直属の上官である

ディカーソン軍曹とホーク少尉にはあからさまに嫌われていた。

そんな中でクロンナウアは、驚くべきことに

ベトナム人とも交流を深めていた。

しかし、このことがきっかけとなり、彼の軍での立場は

危ういものへとなっていくのだった...。


監督はバリー・レビンソン。「レインマン」や「バグジー」、

「スリーパーズ」、「ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ」などを監督。

「レインマン」ではアカデミー監督賞と

ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。

「ウワサの~」ではベルリン国際映画賞銀熊賞を受賞した。

キャストは主役のDJクロンナウアにロビン・ウィリアムズ。「いまを生きる」や

「フィッシャーキング」、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」などに出演。

前作2作ではアカデミー賞ノミネート。「グッド~」では

念願のアカデミー賞を受賞。今作でもアカデミー賞にノミネートされた。

DJと行動を共にする一等兵にフォレスト・ウィテカー。

一つ前に紹介した「スモーク」にも出演した俳優である。

「ラストキング・オブ・スコットランド」ではアカデミー主演男優賞と

ゴールデングローブ主演男優賞を受賞した。


これはベトナム戦争の映画であるが、

戦闘をいかにリアルに映像化するか。という作品ではない。

他の戦争映画と呼ばれるものに登場するような、

正義の名のもとに行われる残酷な殺人のシーンは

ほとんど出てこない。

本当にアメリカ資本で作られたのか。と思うような

戦争、及び戦時中の出来事に対する批判が

込められた作品である。

戦争を行うことがいかに悲しく、いかに愚かなのかを、

DJの声と共に世の中に謳ったのだ。

そういった意味でも、ロビン・ウィリアムスは

まさにハマリ役だった。

マシンガンのように、よくしゃべる。

そして、誰とでも仲良くなれる。しかし、

どこか悲しげな笑顔。悲しみを知っている笑顔。

最後に彼が叫ぶ「グッド・モーニング、ベトナム」

という言葉は忘れられません。