エレファント」 2004年公開


オレゴン州ポートランド郊外にある、

どこにであるような高校が舞台。

カメラはこの学校の生徒の日常を

ドキュメンタリーのように映し出す。

学校に送ってくれた父親が

酔っ払っていることに気付き、

兄に迎えに来るよう電話するジョン。

公園を散歩するカップルを

撮影する写真部員イーライ。

噂話や親への愚痴で盛り上がる女生徒たち。

アメフトの練習後、恋人と待ち合わせるネイサン。

そして、アレックスとエリックはある荷物を

車に積んで学校へと向かっていた。

これから起こる惨劇を誰が予想していたであろうか...


2003年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールと

監督賞を、史上初めて同時受賞した作品である。

監督はガス・ヴァン・サント。「マイ・プライベート・アイダホ」や

「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」、

「小説家を見つけたら」などを監督した。

キャストはプロの役者(大人)が3人のみで、

生徒役は全て、実際の高校生3000人から

オーディションで選ばれた。

劇中でのセリフはほとんどが即興で、

印象的なピアノの演奏も高校生本人の

アドリブによるものとか。


この作品は、1999年にアメリカコのロラド州で起きた

コロンバイン高校銃乱射事件を元にしている。

いつもの日常が静かに、極めて静かに、

何の迷いもなく惨劇の舞台へと変わっていく。

「これは本当に映画か?それとも現実?」と錯覚させる。

何かが始まる前は、それが始まることすら

感じさせないほどの静寂に満ちている。

実際の事件も、誰もが普通の日々の中の一日に過ぎないと

思っていた“その日”に起きたのであろう。

この映画はその残酷な事件を、冷徹に淡々と追っていく。

映画にありがちなラストの大逆転もなく、

正義の見方も現れず、多くの死をもって幕を閉じる。

この作品に“リアリティ”と言える余裕はない。

これは“リアル”だ。