先週の土曜日のこと。
南海難波と御堂筋・近鉄を結ぶ地下道(マルイの前あたり)を歩いておりました。
僕は、せっかちですから、けっこうなスピードで歩きます。それはもう競歩のように。
だから、突然服を引っ張られたとき、軽くビックリしました。ヤクザかヤンキーにでも
ぶつかったんかと思って。おそるおそる視線を後ろに向けると、そこには僕の
妄想と欲望が具現化したような白人(っぽい顔)の女子がいるではありませんか。
大げさに息切れをしながら「あ~良かったぁ~」なんて言っています。
誰こいつ!でもカワイイ!この時点で僕の頭が予想し得る展開は次の通り。
①僕の落し物をわざわざ届けてくれた⇒わざわざありがとう⇒一緒にごはん行こう
②道を聞こうと思ったのに誰も話を聞いてくれない⇒
大阪ってコンクリートジャングルだと思った⇒でもあなたは違った
③アンケートに応えてほしい⇒番号聞かれる⇒懸賞に当選⇒
いろいろな手口でゆすられる⇒実はキャッチセールスでした
①・②が個人的に捨てがたいものの、まっとうに考えて③が妥当でしょう。
巷を賑わすキャッチセールス、美人局ってやつでしょう。普段の僕ならば
警戒して無視をきめこむか、ニタッと笑って立ち去るのかのどちらかですが、
ハッキリ申しまして彼女のかわいさは異常でした。僕があと22歳ほど若ければ、
彼女を指さして「天使さま?」と言っていたに違いありません。
曰く「心斎橋に新しくオープンしたなんとかっていうお店(服屋)のなんとかって
いう取り組みで、町ゆく"オシャレな人"にアンケートとりたいんですぅ。
でも誰も相手にしてくれなくて、やっと聞いてくれたのがお兄さんだったんですぅ」
ということでした。
僕は、生まれて26年間、人にオシャレだのどうのとファッションを
褒められた記憶がございません。先輩・上司による厳しいチェックに
さらされながらも、法衣のような布をいつも身にまとっています。
ということで③案が確定しました。
だってここはミナミの繁華街。
オシャレなバッボーイからグッボーイまで一揃いいるわけです。
そんな中から、そんな目をつぶって針に糸を通すような確率の中から!
経済的事情からくる極度の衣料不足により毎日毎日同じ偽の皮ジャンを
着ている僕をわざわざ選んだ挙句にアンケートの記入を懇願する彼女の
節穴っぷりときたら一体どういう了見なのか。
とは言え、キャッチセールス初体験。キャッチセールス初体験は
人生で一度きり!そう思ってちょっとだけ話を聞いてみることにしました。
周囲の「あの人キャッチセールスにひっかかっちゃってるよ」という視線が
とても痛く、また心外でしたので、カップルを装うため歩きながら会話を続けます。
どうやら地方から大阪に出てきて、アパレル会社に就職。販売員として
頑張っているが、コワイ上司に営業行ってこいと放り出されたんですぅ、という
設定のようです。もっといい設定があるだろうと思いましたがそれは口にせずに
興味なさそうに「へー」とか「ふーん」とか興味しんしんで聞いていました。
断っておきますが僕は終始無表情でした。
話のなかで「お仕事は何を?」と聞かれたので、
真剣な顔をして「亀の売人」と答えました。しかし彼女は合点がいかないご様子。
正直、「何がカメじゃ!!」とキレるかと思ってたんですが、笑いながら
「本当は何なんですか?」と聞いてきます。そしてまたしても真顔で、今度は
「鹿の養殖」と答えました。「え…?」という彼女の本気のリアクションを見て、
僕は自分が全力ですべったことに気づきました。その後、しばらく鹿の話を
ひっぱったのですが、さして面白くもないので割愛します。
しばらくして、いよいよ本題。
アンケートの時間です。どういう手口で書かせてくるのかと思いきや!
「地方から出てきて友達があまりいない。さみしい。
私はあなたみたいな人と知り合いになりたい。だからアンケートに答えてほしい」
という頭イカレてるとしか思えない独自の理論を持ちだすではありませんか。
なぜ友達になる条件としてアンケート用紙への記入が必要なのか。そもそも
「あなたと知り合いになる」と「アンケートに記入」の間で、一切の脈絡が
存在しないのはどういう了見なのか。一見いじましく語る彼女の表情は
その実邪悪な本心に満ち満ちており、嘘いっぱいの笑顔には100%の怪しさと
黒い金のにおいが充満しています。
「あなたと友達になりたいからこのアンケートに応えてほしい」という
彼女の導き出したこの黄金の方程式によれば、僕がアンケートを書くことで
彼女はおろか僕自身も幸せになれるとのこと。そして何かのプレゼントに
当たるかも知れないとのこと(恐らく「●●に当選しました」というフリで電話を
してくるのでしょう)。そしてこれを執拗に強要してきます。
いったいどういう茶番なんです、これは、ねぇ。
この時点で僕の頭のなかの「いつかブン殴ってやりたい野郎ランキング」に
非常に大きな変動が見られ、既に「どうにかしてこの女をおちょくってやりたい」
「痛い目に合わせてやりたい」でいっぱいになっていました。とりあえず
アンケートに答えます。内容は、女性にもらって嬉しいプレゼントは?あげたい
プレゼントは?オススメデートスポットは?みたいなくだらないやつです。
ここは真面目に書いて、あとは番号を記入するのみ。
悩みました。もしもしホットラインの番号を書くか、
081-181-117-117(オッパイ-イッパイ-イイナ-イイナ)を書くか。しかし、
その場でホットラインの番号を思い出せなかったこと、そして081~のほうは
一見完璧に一般の電話番号を装っているものの、万が一見破られた場合に女の
反応が読めないことを理由に「やっぱり無理…」と我ながら煮え切らない発言をしました。
するとですよ、今まであんなにかわいかった女子の顔が豹変。
表情というものが一瞬にして消え失せ、一瞥した後、無言でその場を
離れるではありませんか。ビクッとしました、僕。え?あれぜんぶ小芝居
だったの?って。あぁいうのがいるってことは、ひっかかる人もいるってことで、
都会のこわさを思い知りました。キャッチセールス、イクナイ!
はまだ